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The 30 Best Tracks of the Decade

Pitchforkが2010-14のベストトラック200とベストアルバム100をやっていたので取り急ぎトラックの方を選んでみました。100も200もここで書いても誰も見てくれないと思うのでぐぐっと数を抑えて30曲選んでみます。あくまでも自分が音楽を駒にしているのではなくて、音楽が自分を駒にしているみたいなイメージで……。知らねーなって曲があったら(このブログを読んでくれるような優しい心の持ち主かつ聡明な方々には無いとは思いますが)曲名をコピペしてyoutubeでもなんでも検索かけてすぐ聞いてみてください。その時間、絶対に損はさせないと保証します。そんな30曲です。

30. Rustie / Surph (from "Glass Swords" 2011)
29. SALU / The Girl on a Board (from "In My Shoes" 2012)
28. Maria Minerva / I Don't Wanna Be Discovered (from "Will Happiness Find Me?" 2012)
27. Pev / Aztec Chant (2013)
26. ERA / Feel (from "3 WORDS MY WORLD" 2012)
25. 田我流 / Straight outta 138 feat. ECD (from "B級映画のように2" 2012)
24. Floating Points / Sais (from "Shadows" 2011)
23. Jai Paul / Jasmine(demo) (2012)
22. DJ Koze / Magical Boy (from "Amygdala" 2013)
21. わがままカレッジ / 可愛い子はだいたい彼氏がいる (2013)
20. Theo Parrish / 71st & Exchange Used To Be (2014)
19. Joy Orbison / BB (2010)
18. Ogre You Asshole / ロープ (from "homely" 2011)
17. LCD Soundsystem / Drunk Girls (from "This is Happening" 2010)
16. Vakula / I Wanna Dance With You All My Life (from "Leleka 2" 2012)
15. The Weeknd / What You Need (from "House of Baloons" 2011)
14. Osamu Ansai / Twiliht Featuring Yu Kamata (from "Lovin' Life, Lovin' You EP" 2011)
13. MSC / シークレットサービス (from "DEDICATED TO MAKI THE MAGIC - MAGIC MAGIC MAGIC" 2014)
12. 東京女子流 / Limited addiction (from "Limited addiction" 2012)
11. Gil Scott-Heron & Jamie XX / I'll Take Care Of U (from "We're New Here" 2011)
10. Factory Floor / A Wooden Box (2010)


Factory Floor - A Wooden Box - YouTube


9. Girls / Honey Bunny (from "Father, Son, Holy Ghost" 2011)


Girls - 'Honey Bunny' Official Video - YouTube


8. Kahn / Dread (2012)


Kahn - Dread (DEEP MEDi Musik) 2012 - YouTube


7. Jazz Dommunisters / XXL feat. MARIA, ICI  (from "BIRTH OF DOMMUNIST" 2013)
6. Deerhunter / Revival (from "Halcyon Digest" 2010)


Revival - Deerhunter (Music Video) - YouTube


5. Andres / New For U (2012)


Andrés - New For U - YouTube


4. Janelle Monae / Tightrope Feat. Big Boi (from "The ArchAndroid" 2010)


Janelle Monáe - Tightrope [feat. Big Boi] (Video ...


3. Drake / Over My Dead Body (from "Take Cere" 2011)


Drake - Over My Dead Body - YouTube


2. 乃木坂46 / おいでシャンプー (2012)

1. Frank Ocean / Thinkin Bout You (from "Channel Orange" 2012)


Frank Ocean - Thinkin Bout You (HD & Lyrics 1080p ...

8/3

目が覚めてiPhoneを眺めると、時間は目覚ましが鳴る予定だった頃よりだいぶ早くて5時間ほどしか眠れなかったようだが、不思議と疲れはほとんど無かった。前日の銭湯が効いたのかもしれない。いい時間になるまで他人の家の蔵書をダラダラと読んでいたのであまり実感が沸かなかったが、歯を磨いてシャワーを浴び家を出ることによってようやくTIF2日目が始まった。

朝一で向かったのはマイナビステージと名付けられたステージだ。この名称は……やはりアイドルという文化が本質的に産業であって、我々の行動は全て資本主義の車輪を回していることに他ならないという厳然たる事実を突き付けられるようで正直ぞっとしない。一山当てようとする業界人や野心に満ちた少女たちの餌に使われるのはもう本当にウンザリなのだが、夢みるアドレセンスはそんな心境にまさに相応しいパフォーマンスを見せてくれた。その後見たiDOL Street ストリート生 e-Street選抜 & w-Street選抜は楽曲がとても機能的に作られているのが印象的だった。ここでコール、ここでケチャ……それは一見自由に自分たちの意思で行われているようだが、実は厳格なコードに基づいて執り行われている。マイナビという企業が一見自由な選択肢を与えてくれるようでありながら、あくまでマイナビ的なフィルターや世界観を通した選択肢でしかないという現実とオーバーラップしているようだ。

そういったくだらない雑念を吹き飛ばすような面白さを見せてくれたのがlyrical schoolで、彼女らが太陽の下体をしゃかりきに動かしながらラップをしている姿を観ていると、ただただ音楽をみんなで踊りながら聞くことの楽しさを思い出すことが出来た。無銭エリアでもあったので一際オーディエンスも多かったようだが、今の彼女たちは観客が多くなれば多くなるほどエネルギッシュで高揚感に満ちたものを見せてくれる。楽曲が面白いアイドルというのが珍しいものではなくなった今重要なのは、一歩間違えれば偏狭なものになってしまいかねない音楽への拘りを、しかし音楽によって突破するパワーを持っていることだと確認させられるものだった。

その後違う友人とも合流し、次に何を見るか考えながらダラダラとアイスやピザを食べたりしていた。こういう時間が一番楽しかったということは記しておきたい。物販エリアで遊んだり色々あったりした後SMILE GARDENにてGEMとTPDを見た。GEMは確かに凄い。『Do You Believe?』なんてDiploを通過したK-POPのリズムへのアイドルからのアプローチという点で現行のアイドルシーンでも割りと珍しいのではないだろうか、しかも完成度は高い。そんな楽曲にも向こう見ずにコールを入れていく若いファンの姿を見るとリズム解釈の貧しさを嘆くよりもまず感心してしまうのだが、少しは共感もできて、何故ならあんな音楽を聞かされれば踊るか叫ぶかしか無いからだ。で、アイドル現場のコードに慣れてたらそりゃあ叫ぶでしょう。

東京パフォーマンスドールは昨日より更に短い20分のセットだったが、時間の制約をまったく苦とも思わないかの如く、一貫した魅力があった。タイトで、ダンサンブルで、古臭いのだけれど洗練されている。ところでTPDの持つこの古臭さは楽曲が90年代のものであることのみに起因するのではない。彼女たちは、何が素晴らしいのかという問題に対する判断を畏れず、素晴らしいものというものの存在を信じながら新しいものを創造していく。しかし、それは今日では絶望的なまでに古びた考えになってしまっているのだ。今時ダンスを高めていったって、観客を高揚させていくスキルを持っていったってそれはもはやなんでもない。しかしそれでも彼女らは自らの演芸を洗練の高みへと昇華させることをやめようとはしないし、だからこそ俺はTPDを称賛したい。演劇であれライブであれ、あるいはワンマンであれフェスでの一アクトとしてであれ、とにかくいつ何時見ても確かな魅力を感じられる理由は彼女たちがそんなある種の絶対性というものを時代遅れであっても信じているからなのだから。ま、そんなことはさておいてもカンカンに晴れた太陽の下、スピーカーの前でスペースを確保し、踊りながら見るTPDというのもとても良かった。音楽聞いてアイドル見ながら踊るのってこんなにブチ上がるものなのか。

その後DOLL FACTORYへ向かう。かなり長い入場列だったが、お目当てのTHE ポッシボーまでには間に合った。昨日のHOT STAGEでは歌と踊りの楽しさを素直に感じられるものだったが、ここではそれとはまったく異なる洒脱で洗練されたものを見ることが出来た。それは歌に重点を置いたとてもしなやかなパフォーマンスだった。こんなところにも芸達者で多面的な魅力を持つ彼女らの魅力を感じ取ることが出来た。

DIANNA☆SWEETも愛乙女★DOLLも初見だったが驚くほど面白かった。曲が特別素晴らしいわけでもルックスやダンスが特別優れているわけでも無いのだが、両者共にきっかけさえあれば容易に追いかけることになるだろうと思わせるパフォーマンスで、改めてこのジャンルにおける地力というものを強く感じた。

セクシーなきっかを経て再びTPD。更に短く15分のセットだったが素晴らしかったことはもはや言うまでもない。今年のTIFでそのパフォーマンスが見られるのは最後という所も含めてちょっとの感傷性があったのもまた良かった。

ベビレ、ポッシ、ぱすぽ、女子流はひたすら後ろのほうで騒いで踊っていたのであまり書くことがない。最後も祭りの大団円という形で楽しかった。振り返ってみるとそれほどアイドルは見れなかったし、意外な驚きというのもそれほど無かった2日間だったが、陳腐な表現を使えば夢の様な時間だった。友人たちと過ごす空間/時間としてあれほど楽しいことはそう無いような気がする。日焼けが未だに治まらないのだが、このあまりに色が変わった自分の肌を見るとあの時間が夢ではなかったことを思い出してもしまうのである。

8/2

キャリーケースを持ちながらこの猛暑の中でも絶対にマスクを外さない目元の鋭い少女たちと、ビビッドなカラーのTシャツを着用しタオルを首からかけた男たちが乗り合わせたこのゆりかもめという電車は一体どうなってしまうんだろう、なんていうことを考えながら俺の今年のTIFが始まった。今年のTIFなどといっても、去年は参加出来なかったので2年越しということになるのだけれど、強力で無慈悲な太陽の日差しを浴びるが如くアイドルをひたすら見まくることが出来る祭典というTIFの雰囲気はあまり変わっていなかった。とにかくこの2日でめちゃくちゃに日に焼けてしまった。3,4日して思い返しながら日記を書いてる今、水疱が出来て患部がジワジワと熱いのである。まったく重症だ。

まずリストバンドを交換しその勢いでのままスマイルガーデンでスマイレージ、リンダIII世、アイドリング x AeLL.を眺め、アプガを見る。久しぶりに見たのだけれど相変わらず良かった。暑苦しい体育会系イズムだとか「全力」を押し付けてくるだとかそういった批判はまったく意味のないことで、彼女たちについてはステージ上での動きにひたすら目をやり、流れてくるサウンドに踊るだのコールを入れるだのの自分なりの解釈を加えればそれだけで良い。『全力!Pump Up!!』『アップアップタイフーン』『サマービーム!』と彼女らの持ち曲の中ではキラーと言えるわけではないセットリストだったが(もちろん『サマービーム!』は最高)、普段より更に狂乱しているようにしか見えない佐保ちゃんが、笑顔で鍛え抜かれた身体をバスンバスン動かしていて、セットリストの不満はまったく気にならず。今日一日を全力で楽しまなければと、朝からケツを蹴っ飛ばしてくれるパフォーマンスだった。

その後違う友人と合流し、HOT STAGEへ。ミスiD2013-2015を見た。玉城ティナや蒼波純といったインターネットで見たことある人たちが登場した後、ステージ上に入りきれないほどに勢揃いしたミスiD2015のセミファイナリストたちはこれは清涼院流水の小説か何かかというくらい強烈で、わけがわからない人たちの集まりだった。小馴れた喋り方をする人もいれば寒々しいものを見せてくれる人もいる。もちろん初々しい表情の人もいるんだけど逆にそちらの方が印象に残った。それくらいにとにかくやったもん勝ちを体現するかのようにひたすら女の人が何かをやっている姿は壮観だった。ここまで来たかアイドル、でもこれは確実にある種の人々にとっては面白いものなのだ。見逃してはならないのである。大森靖子やミスiD2014のセミファイナリストたちのパフォーマンスもあった。大森靖子が書き下ろした曲だという『イミテーション・ガール』が白眉だった。大森靖子はポップなメロディメイカーとしての資質に恵まれていることを確認出来るような、まあ言ってしまえば『ミッドナイト清純異性交遊』part2的な。

HKT48はこういうアイドルフェスに48の看板を背負ったグループが出てくるということの難しさと苦闘するようなパフォーマンスだった。それは置いても、指原莉乃という人がすごい人だというのはそのセットリストのみならず所作や場の仕切り方から大いに伝わってきた。その凄さというのは自分にとってあまり興味のないものであるのだが、こういう人材が今の世の中に求められているということを我々は忘れてはならないのである。……などと吹かしながらも『言い訳Maybe』や『大声ダイヤモンド』から『メロンジュース』や『桜、みんなで食べた』まで盛り上げ方を知っているセットリストと若さそのものでしかないパフォーマンスを食らって、大いに叫び体を動かすことが出来て非常に楽しかった。なこみく、ちっちゃすぎ。ただ、その結果生まれて初めての熱射病(一歩手前)を体験してしまった。全身から力が抜けて立っていられなくなるのです、あれは。

その後女子流と夢アドのパフォーマンスを見るも、なんとなくピンと来ず。体調が良くなかったのもあるだろうけれど、HOT STAGEという場所がいけない。なんというか色気が全然ないうえに、ステージの熱もオーディエンスの熱も全然伝わってこない。コンビニへ寄って友人たちと日陰でアイスをかっ食らったことの方が印象に残っている。

スマイルガーデンでのアイドリング!!!。普段テレビでしか見ることのないアイドリング!!!の人たちを芝生の上でゆるゆると見ているとあぁ俺はTIFに来ているのだなあと感慨深くなってくる。この感慨を得るだけでもアイドリング!!!をTIFで見ることはまったく間違いではない。次に湾岸スタジオに入って涼しい環境でlyrical schoolを見ようとしたが、案の定並びがすごく簡単には入れず。そうこうしている内に機会損失をするくらいなら(これまでインターネット上でしか存在を確認できていない)paletの中野佑美が存在することを確認しようではないか、という結論になり湾岸スタジオから全速力でHOT STAGEまで向かった。アイドルを見に行くためにギャーギャー笑いながら走るという経験は、とてつもなくアホらしくて最高だった。たどり着いた先で見た中野佑美は女性的な体格とメランコリックな表情でなんだか夢の中で見たことがあるような気がした。

その後THE ポッシボーをHOT STAGEで。初めて見たが、一言で表すなら最高だった。この日がちょうど8年目の節目だということを最初に言っていたのだが、8年という月日は彼女らにとって、"まったく感じさせない"という枕詞で表現されるべきものでも、あるいはもちろん無駄なものなんかでもなく、ただ彼女らが着実に、確かに踏み越えてきた歴史に他ならないということを感じさせるものだった。パフォーマンスが安定しているだとかそういうのを超えて、ファンとオーディエンスの理想的な信頼関係の上で自由に楽しく歌って踊ること、それ自体のエネルギーが伝わってくる。こういうライブを見るとひたすらに元気が出てくるのだ。まだまだこれから面白いことが山ほどあるのだろう。

その後再び湾岸スタジオに戻り、東京パフォーマンスドールを待つ。その前にやっていたエレクトリックリボンはMacBookを動かしている風なメンバーがフックになると自らも歌う、みたいなことをやっていてファンキー加藤っぽい……などと思っているとメンバーが卒業を発表してしまっていた。名前だけ知っている初見のグループで1曲しかパフォーマンスを見ていない自分はえっ寂しいなあくらいのことしか思えないのだが、恐らく同じ空間でも前の方にいた人たちは本当にショックを受けていたことだろう……。この温度差がフェスの残酷さだと思った。

今年のTIFで絶対にすべてのステージを見ようと思っていたのが東京パフォーマンスドールで、シブゲキで1回見たきりだったのだが、記憶よりも圧倒的に良かった。30分という持ち時間をフルに使い切るということはこういうことでしかあり得ないと言わんばかりに曲間をミックスしキックで繋げることによって、生み出された熱気を削ぎ落とすことなく次の曲の勢いへとどんどんどんどん昇華させていく。彼女らの凄いところは、あまりに洗練されているせいで一見アイドル的なステージングではないのにも関わらず、きちんとコールだったりリズムに合わせて手を振り上げたりとオタク的な楽しみ方を誘発させてくれることだ。"拙さが逆に良い"といった倒錯的なものではなく真っ当に時間とお金がかけられた彼女らのステージングは、あまりに真っ当で説明可能な魅力であるため、90年代的な曲調に存在する冷たさと相まって物足りないものとも思われるかもしれないのだが、メンバー個人個人の魅力的で余裕を持った態度でそれを補っているように思えた。こういうものを見せてくれるところが売れて欲しい、心からそう思う。

その後スマイルガーデンでBELLRING少女ハートを見る。辺りはすっかり暗くなっている中、唯一煌々と照らされるステージで黒衣に身を包みながらダラダラと踊る……というかバタバタと体を動かしている姿はとても雰囲気があって良かった。最高のものを見た後に最低のもの(褒め言葉)を見せられたような心地だった。

アイドリング!!!をSKY STAGEで見るため待機列に並びエレベーターに乗る。2日間でSKY STAGEに登ったのは結局この時だけだったのだが、とても心に残っている。アイドリング!!!を待ちながら友人とコンクリートに寝転がりながら駄話を繰り広げていると流れ星が流れてきた。東京という街は明るすぎて星が見えない。が流れ星は見える。多分アイドルもそうなのだろう、TIFという空間は明るすぎるがしかしアイドル1人1人が流れ星なのだ。そのことを我々は忘れてはならないのである。2年前も夜のSKY STAGEで見た(それも最高だった)記憶があるアイドリング!!!だったがやはりロケーションといい、曲の良さといい、ゆるっとした雰囲気といい、すべてが1日目のラストを飾るに相応しいアクトだったと思う。満たされた気分を胸に、エレベーターで地上に降りた。

終了後、一旦家に帰った後、代々木の銭湯へ行き、その日一日中行動を共にしていた友人の家へ泊まった。ところで銭湯に入った後コーヒー牛乳を飲んだのだが、最高だった。今までの人生で一番美味しく感じられた。多分アイドルも疲れきった後に入った銭湯の後に飲むコーヒー牛乳のようなものなのだろう。そのことを我々は決して忘れてはならないのである。

2日目も多分性懲りもなく書きます。

7/21

とりあえずゴタゴタが終わったので、最近は本を読んだり映画を見ていたりしている。コーマック・マッカーシートマス・ピンチョンの未読(まあ既読の方が少ない体たらくであるのだが……)のやつをダラダラと読んだり、増村保造の激しい人間賛歌に胸を打たれたり80年代イーストウッドのB級作家感に安堵したり……。そんなどうしようもない毎日を過ごしております。

で、『エロ将軍と二十一人の愛妾』『徳川セックス禁止令 色情大名』を新文芸坐で見てきた。前者は初見。エロとグロと笑いと反権力が同じ熱量で、同等に敬意を払われ、描かれているという点でまあ素晴らしい。それとこの時代の東映特有のものなのか画作りを越えた所で渦巻いているかのような熱気と映像的な拘り(特に『エロ将軍と二十一人の愛妾』でのラストの360度パンには唖然!)が重なることで凄まじいまでの魅力を放っているように思えた。しかし『徳川セックス禁止令 色情大名』の音楽の良さは一体なんなんだろうか。花火が打ち上げられながらの凄惨な切腹シーン(そういうシーンがあるのです)に洒脱なフュージョンがかかり、夢想レズのシーン(そういうシーンがあるのです)でモンド歌謡がかかるというわけのわからなさなんだけれど異様な説得力があるという……。この時代の東映で言えば実録路線や女番長シリーズでのファンキーなジャズとは一風異なる艶やかなタッチが映画全体のどこか夢見心地の質感に繋がっているような気がする。しかしこういった映画がゴールデンウィーク封切作品としてお金をかけて作られていたという時代がこの国にもあったのだなあと、今では失われてしまったものの大きさに悲しくなったりもしました。

6/26

アイドルでなくなってしまったアイドルについて何も言わないこと以外に誠実な態度で接する方法というのは存在するのだろうか。好きだったアイドルが去ってしまうことについて、何かを誠実に語ったりせめて恥ずかしくないことを言おうと思ったりもするのだけれど、どう考えても何をどうしても、言った後に恥ずかしくならない言葉というものが思い浮かばない。昔は一生懸命何かを書こうとしてたりもしたけど、結局単なる自分語りになってしまう恥ずかしさから逃れることが出来ないというか……。

上半期ベスト

なぜ我々はランキング作りをやめることが出来ないのだろう。どうせ明日になったらすべて変わってるのに……ということで上半期のとりあえずのベスト・アルバム10枚。コンピや再発は除く。


銀杏BOYZ / 光のなかに立っていてね
・Kassem Mosse / Workshop 19
シャムキャッツ / After Hours
・Wen / Signals
・YG / My Krazy Life
Moodymann / Moodymann
Pharrell Williams / G I R L
・Hercules & Love Affair / The Feast of the Broken Heart
坂本慎太郎 / ナマで踊ろう
・Max Graef / Rivers Of The Red Planet

 

って感じでしょうか。相変わらず統一感が無いけれどまあ仕方がない。音に対する新たな探求の結果を見せながらリスナーへの目配せを忘れることはないという意味でポップな作品が好きです。はい。

また観てきた

唐突だが7,000円という金額が自分にとってどれほど価値があるものかと言えば、まず中古のCDを買いにディスクユニオンへ行けば気になっていたアーティストのカタログは大抵集めることが出来るだろうし、タワレコに行けば時代の音というものをひと通りなぞるのに足る金額だ。シネコンに行けば4本新作映画を見られる。名画座に行けば10本くらい素晴らしい作品を見られるだろう。ある作家の特集上映をコンプリートすることだって可能だ。東京は本当に良い街だ。また、気合の入った専門書や単行本を2冊ほど買うことも出来るだろうし、前から欲しかった文庫本や新書をまとめて買うことも出来る。ランチをいつもより奮発して一週間過ごせるし、友人たちと豪勢に食べて飲んで遊んでも、俺のちっぽけな生活水準からすれば十分お釣りが来る金額だ。いやー凄い。

さて、そんな俺にとっては大金であるところの7,000円を費やして再び16人のプリンシパルtroisを見に行った。今回の第一幕はこの前観劇した際の、目に見えて弛緩してダラダラとした雰囲気と物真似の一発フレーズで笑いを取ろうとする行為が減っていて随分見やすくなっていた。正直言ってそれだけで良いなと思ってしまった。これは松井玲奈さんが参加していたことが影響しているのだろうか。だとしたら凄い。あとは伊藤万理華さんが「まりっか17'」を歌ってるのを見れたのは嬉しかったし、松井玲奈さんと中田花奈さんがゲキカラの話をしていて個人的にアガった。皆かわいいからそこにいて演技をしたりコントをしたりしているだけで十分満足という意見に納得出来ないこともない。

しかし何度見ても第二幕はやはり受け入れられなかった。どこが気に入らないかは前の記事に随分書いたのもあるので、大上段の話を展開させて申し訳ないのだが、まあしたいので大上段の話を展開させていく。

俺は観客という存在を軽視し、"テレビ的なお約束"を裏切ることとなあなあの雰囲気を作り出すことそれのみによって笑いを取ろうとする舞台や映画表現を心の底から軽蔑する。だってそんなことをやってる人間が興行的にでも批評的にでも"正しい"ということにされてしまえば、雰囲気や予定調和に逃げずに誠実に面白いもの、新たなものを作り出そうという人々はバカらしくなってしまうだろう。その結果世の中はどんどんどんどんつまらなくなっていく。ヒマになってしまう。それはとても困る。

ところで、つまらなくなっていくというのは具体的には、複雑で豊かな感情が渦巻く表現というのが少なくなっていき、説明的で「悲しい」だとか「楽しい」だとか単一の感情しか存在しないし与えてもくれない表現が増えることをここでは言う。

悪魔のいけにえ」というホラー映画がある。堀未央奈さんのフェイバリット・ムービーらしいが、俺もラストシーンが大好きで、それを観るために家で何度も繰り返し再生している。あのラストが何故素晴らしいかと言えば、それは複雑な感情を我々に想起させるからだ。鳴り響くチェーンソーの轟音と舞うレザーフェイスを見ると、「悲しい」とか「怖い」とか「安心した」とかあるいは「美しい」とか、とにかく様々な感情の断片が混ざり合い、その結果自分でもどうにも説明することが出来ない、言葉として表すことがまったく不可能な感情が生まれる。俺はそれを豊かな経験だと思うし、肯定する。

ここが笑う所ですよ、という雰囲気を作り出し、そのための記号をポイポイと放り込み、観客がそれに対応して笑う。俺はこれを単純で、つまらない表現が生み出すつまらない経験だと思う。ホント、勘弁して欲しい。つるっつるで何も創意工夫がなく、「ノリ」とか「雰囲気」で誤魔化そうとする表現はつまらない。

もちろん、こうした連中の作品は俺にとって何の必要もない。世の中には過去の偉大なる人々が自分の才能と努力を注ぎ込んでようやく作り上げた数々の素晴らしい作品が生涯で見きれないほど存在しているし、言葉や国は違っても何か面白いものを作り出してやろうとする人々が今もたくさんいる。テレビ的な作品を観るのはそれが好きな人たちに任せて、俺はそっちを見ていればいいのかもしれない。

でも俺は、"アイドル"という今この時代のこの国に今実際に生きている、めちゃくちゃかわいくて魅力的な女たちが、作家の創意に満ちた表現と手を組み、舞台や映画という場で暴れまくる表現を心の底から望んでいる。好きなものと好きなものが合わさればもっと好きになるに決まっていると思う。見たくて見たくて仕方がない。だから、大金を費やして手抜きで作る連中がのさばり、舞台や映画という場でアイドルを手掛けていると本当に困る。実害がある。これは別に福田雄一氏に限った話ではない(そもそも彼はTVバラエティを作る才能はあるし、それは面白いとも思う)。

なので、こうした単純極まりない舞台や映像作品が少しでも減ればいいなと思うし、こんな酷いものがありますということは誰かに伝わってなんとかしてほしいなーとも思う。心の底から思うのだが、俺はこの世の中が少しでも面白い世界になってほしい。実際はこの文章は誰にも見られもしないし、誰かに影響を与えることも出来ないだろう。それでもとにかく、見てしまった者の責務として思ったことを言わなければどうにもならない。そういうわけでまたダラダラと愚痴と諦念とちょっとの期待が混じった文章を書いているのである……。

アイドルファン向けだからだとか対象年齢が若いからだとかいう理由で不誠実な作品が許されるということはありえないと信じる理由について

最近『LEGOムービー』という映画を観た。これはタイトルの通り、おもちゃのレゴを題材とした映画だ。驚くべきことに映画のほとんどがレゴ(シャワーの水や爆発の煙まで!)で形成されているという、まるでアイディア一発を偏執的なまでの創造力で映画としていったかのようなまあなんというか凄いものだった。フィル・ロード&クリス・ミラー監督の過去作がお好きな方はもちろん、下記で述べる理由によってエドガー・ライト監督作がフェイバリットだという方々にも推薦したい。

この映画の対象年齢は低い。少なくとも世間的にはいわゆる"子ども向けの映画"なのだろう。実際に俺が見に行った時も観客は小さな子ども連れの親子がほとんどで俺のような映画ファン(a.k.a. キモヲタ)や、"毎週シネマハスラーを聞き、毎月映画秘宝を読みます"みたいな人はかなり少なかった。というか俺くらいしか一人で見てる人はいなくてちょっと恥ずかしかった。いや、それはいい。しかし、この映画は(重要な要素のネタバレになるのでぼやかす形で言う)後半、"レゴというおもちゃ"にまつわる我々が普段持っている視点を重層的なものとして映画内に用意し、メタ的に対立させ、物語へ絡ませることにより、きわめて真摯な表現足りえる完成度を有するものとなっていたのである。ただ単に映像的なスペクタルで観客を驚かせることに留まらず、「レゴを使って映画を撮る」という行為に対して誠実な問い掛けとそれに対する一つの答えを提示していた。そしてその答えはレゴというおもちゃに対する暖かな目線から生まれたものであり、作り手の愛情とそれを形にするプロフェッショナルたちの信念が込められていた。そこに俺は感動してしまったのである。

さて、自分はまあいいおっさんなのでとても楽しめたのだが、観ている間思ったのは「後半の流れに子どもたちはついていけるのだろうか?」という事である。スムースな編集とメタ視点の絡ませ方がうまく、映像表現として説話機能が不十分ということはないものの、そもそもこうした重層的で少し複雑な表現(しかも物語の世界観を壊しかねないもの)というものが幼い子どもたちに受け入れられるのかちょっと不安になってしまったのだ。

しかしその懸念はまるで杞憂だったことを認識する。上映終了後、映画館に照明が灯りそこら中から聞こえたのは他でもない子どもたちが興奮気味に親に語る「おもしろかった!」「楽しかった!」の声だ。中には「感動した」という幼い声もあったのを鮮烈に覚えている。

対象年齢が、だとかアイドルオタク向けだから、という理由を付ければ不誠実で予定調和的な語りをしていいのだろうか。アッパラパーベロベロバーみたいな幼児的な笑いをもたらすだけの存在をコメディと称することが許されるのだろうか。俺は、断じて違うと思う。子ども向けだからこそ子どもの想像力は最低限上回ってなければならないし、コメディだからこそ我々の考える「笑い」の常識というのを上回る予測不可能な体験でなければならない。アイドルオタク向けだからこそ、アイドルの魅力を十二分に引き出すのみならず、アイドルがかわいい以上の要素を突き付けなければいけない。子どもだろうといい年こいたアイドルオタクだろうと、不誠実な語りを平気で許容する連中が想定する「愚かな観客」など実際に存在するのか俺にとっては大いに疑わしい。仮にわからない表現を突きつけられたとしても、それが良質なものであるならば人々は何故わからなかったのか自分なりに考察することになるものだ。複雑な表現はまた、作品を介して他者と語り合う契機ともなるだろう。そして、それはとても豊かな時間だと考える。

そもそも、普段文化に興味が無い人々が集まりやすいからこそ誠実な語りを行うことで、異なる世代や異なるトライブの人々を文化の深淵でわけのわからない世界へと引きずり込んでしまうような作品こそがこのような場では求められるのではないか。そうした他者へのアプローチを行う努力を放棄し内輪向けの安易な方向へと転がってゆく表現を肯定することは、様々な異なる人々が混ざり合う観客という存在への冒涜であり、多様性を排除する乱暴さに満ちた行いだ。それに加担することは少なくとも俺は遠慮したい。