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目が覚めてiPhoneを眺めると、時間は目覚ましが鳴る予定だった頃よりだいぶ早くて5時間ほどしか眠れなかったようだが、不思議と疲れはほとんど無かった。前日の銭湯が効いたのかもしれない。いい時間になるまで他人の家の蔵書をダラダラと読んでいたのであまり実感が沸かなかったが、歯を磨いてシャワーを浴び家を出ることによってようやくTIF2日目が始まった。

朝一で向かったのはマイナビステージと名付けられたステージだ。この名称は……やはりアイドルという文化が本質的に産業であって、我々の行動は全て資本主義の車輪を回していることに他ならないという厳然たる事実を突き付けられるようで正直ぞっとしない。一山当てようとする業界人や野心に満ちた少女たちの餌に使われるのはもう本当にウンザリなのだが、夢みるアドレセンスはそんな心境にまさに相応しいパフォーマンスを見せてくれた。その後見たiDOL Street ストリート生 e-Street選抜 & w-Street選抜は楽曲がとても機能的に作られているのが印象的だった。ここでコール、ここでケチャ……それは一見自由に自分たちの意思で行われているようだが、実は厳格なコードに基づいて執り行われている。マイナビという企業が一見自由な選択肢を与えてくれるようでありながら、あくまでマイナビ的なフィルターや世界観を通した選択肢でしかないという現実とオーバーラップしているようだ。

そういったくだらない雑念を吹き飛ばすような面白さを見せてくれたのがlyrical schoolで、彼女らが太陽の下体をしゃかりきに動かしながらラップをしている姿を観ていると、ただただ音楽をみんなで踊りながら聞くことの楽しさを思い出すことが出来た。無銭エリアでもあったので一際オーディエンスも多かったようだが、今の彼女たちは観客が多くなれば多くなるほどエネルギッシュで高揚感に満ちたものを見せてくれる。楽曲が面白いアイドルというのが珍しいものではなくなった今重要なのは、一歩間違えれば偏狭なものになってしまいかねない音楽への拘りを、しかし音楽によって突破するパワーを持っていることだと確認させられるものだった。

その後違う友人とも合流し、次に何を見るか考えながらダラダラとアイスやピザを食べたりしていた。こういう時間が一番楽しかったということは記しておきたい。物販エリアで遊んだり色々あったりした後SMILE GARDENにてGEMとTPDを見た。GEMは確かに凄い。『Do You Believe?』なんてDiploを通過したK-POPのリズムへのアイドルからのアプローチという点で現行のアイドルシーンでも割りと珍しいのではないだろうか、しかも完成度は高い。そんな楽曲にも向こう見ずにコールを入れていく若いファンの姿を見るとリズム解釈の貧しさを嘆くよりもまず感心してしまうのだが、少しは共感もできて、何故ならあんな音楽を聞かされれば踊るか叫ぶかしか無いからだ。で、アイドル現場のコードに慣れてたらそりゃあ叫ぶでしょう。

東京パフォーマンスドールは昨日より更に短い20分のセットだったが、時間の制約をまったく苦とも思わないかの如く、一貫した魅力があった。タイトで、ダンサンブルで、古臭いのだけれど洗練されている。ところでTPDの持つこの古臭さは楽曲が90年代のものであることのみに起因するのではない。彼女たちは、何が素晴らしいのかという問題に対する判断を畏れず、素晴らしいものというものの存在を信じながら新しいものを創造していく。しかし、それは今日では絶望的なまでに古びた考えになってしまっているのだ。今時ダンスを高めていったって、観客を高揚させていくスキルを持っていったってそれはもはやなんでもない。しかしそれでも彼女らは自らの演芸を洗練の高みへと昇華させることをやめようとはしないし、だからこそ俺はTPDを称賛したい。演劇であれライブであれ、あるいはワンマンであれフェスでの一アクトとしてであれ、とにかくいつ何時見ても確かな魅力を感じられる理由は彼女たちがそんなある種の絶対性というものを時代遅れであっても信じているからなのだから。ま、そんなことはさておいてもカンカンに晴れた太陽の下、スピーカーの前でスペースを確保し、踊りながら見るTPDというのもとても良かった。音楽聞いてアイドル見ながら踊るのってこんなにブチ上がるものなのか。

その後DOLL FACTORYへ向かう。かなり長い入場列だったが、お目当てのTHE ポッシボーまでには間に合った。昨日のHOT STAGEでは歌と踊りの楽しさを素直に感じられるものだったが、ここではそれとはまったく異なる洒脱で洗練されたものを見ることが出来た。それは歌に重点を置いたとてもしなやかなパフォーマンスだった。こんなところにも芸達者で多面的な魅力を持つ彼女らの魅力を感じ取ることが出来た。

DIANNA☆SWEETも愛乙女★DOLLも初見だったが驚くほど面白かった。曲が特別素晴らしいわけでもルックスやダンスが特別優れているわけでも無いのだが、両者共にきっかけさえあれば容易に追いかけることになるだろうと思わせるパフォーマンスで、改めてこのジャンルにおける地力というものを強く感じた。

セクシーなきっかを経て再びTPD。更に短く15分のセットだったが素晴らしかったことはもはや言うまでもない。今年のTIFでそのパフォーマンスが見られるのは最後という所も含めてちょっとの感傷性があったのもまた良かった。

ベビレ、ポッシ、ぱすぽ、女子流はひたすら後ろのほうで騒いで踊っていたのであまり書くことがない。最後も祭りの大団円という形で楽しかった。振り返ってみるとそれほどアイドルは見れなかったし、意外な驚きというのもそれほど無かった2日間だったが、陳腐な表現を使えば夢の様な時間だった。友人たちと過ごす空間/時間としてあれほど楽しいことはそう無いような気がする。日焼けが未だに治まらないのだが、このあまりに色が変わった自分の肌を見るとあの時間が夢ではなかったことを思い出してもしまうのである。