2019Best

2019 Best Live

  • Refugee Market @ IKB BED

そんなに足繁くBEDに通っていたわけではないので申し訳ないのですが最高のライブがたくさん見れた。フレシノとJのライブはfebbの追悼パーティーの時よりもタイトでパワフルだった。音楽の良さとヒップホップとしての良さって必ずしも両立しないと思ってるんだけどこの時の2人は奇跡的なほどそれが噛み合ってたと思う。ヒップホップ全振りなBEDの人々のイカつく怖すぎるラッピンの格好良さにもシビれた。BESのライブ中に停電したのも劇的で印象的だった。

ceroはともかく(今年も何回か見たけどいつでも最高だった)はじめて見たFishmansにヤラれた。単なる懐メロバンドではなくきちんと手を入れながら当時の魅力(生で見てないから知りませんが)を維持してるような良さがあった。ダブの気持ち良さとポップソングとしての軽やかさよ。『ひこうき』が聞けたのは率直に感動した。

  • 森、道、市場 2019

単純に楽しかった。カーネーションと、平賀さち枝とホームカミングスはロックンロールだったしAwich x kzmもポップな暴動って感じで素晴らしかったけどヒップホップにフリーキーな即興性/実験性を持ち込んだBlacksmokersのライブがベスト。

  • ELNINO @ 渋谷Contact

森道市場があまりに衝撃的だったのでBlacksmokersのライブ目当てで。似たような雰囲気だったが、よりクラブ寄りというかメロウでソウルフルな展開も見せてくれて実験的な怪しさがあった。Jin Doggも超暴力で最高でした。

3日目にVince StaplesとPhony Ppl.を目当てで。ダークで虚無的だがニヒリズムではなく、虚無を抱えながらただライムを呟いていくVince Staplesもひたすら楽しくおもしろいPhony Ppl.も圧倒的に素晴らしかったが、最前で見た平賀さち枝とホームカミングスが思いの外良すぎた。あと始発で帰ってその後エクストリーム出社したのは2019年ベスト現場回しでした。

NYに行ってきて見た。海外ではクラブには行った経験あったけど、ラッパーのライブを見たのは初めてで、その補正もありながらしかしFreddie Gibbsのトラップもブームバップも余裕でメチャウマに乗りこなせる辺りに圧倒的にアガってしまいました。MOMA(分館)でやってたので雰囲気もサグすぎずアートな感じがあってノリやすかった。メトロカードの接触が悪くて全然入金出来ずめちゃくちゃイラつきながら帰ったのも含めて忘れられない思い出で最高でした。ニューヨーク歩きながらひたすらヒップホップ聞いて理解が深まりました(錯覚)。

今年は達郎さんのコンサートを2回見れたということで。何回見ても素晴らしすぎた。セットリストも『Paper Doll』や『BOMBER』など聞けて大満足。2020年はオリンピック(本当に害悪だと思ってます)のためにライブをしないそうですが2021年はまた。

アメリカン・ミュージック主体のバンドは暖かくて心地良くて単純なポップスというか、むしろ90年代のアンビエント期を抜けた細野さんだからこそなのかなと。素晴らしかった。

2019 Best 現場

  • チーム8@TDCホール(朝・昼)

チャン玉(大の大人が玉入れする競技があるのです)で最前当たったので当然楽しかった。

  • チーム8@河口湖ステラシアター

諸々の熱気含めて最高だった。

これ以降外イベ行ってないんですけどこれが楽しすぎたのでまあええか、、という感はあるくらい楽しかった。

  • STU48@サマーステーション

前の方で見れたから楽しかった。

  • 偶然の出会いのように@KAAT

今年のベスト・オブ・ベスト。昔の自分がアイドルのこんな舞台があったらな~と夢想していたのが実現されたような。もちろんBS放送版も録画して今でもちょいちょい見返しています……。

2019 Best Sauna

  • サウナと天然温泉 湯らっくす(熊本県)
  • サウナ&カプセルホテル ウェルビー栄(愛知県)
  • 富士眺望の湯 ゆらり(山梨県)
  • スパ&ホテル 舞浜ユーラシア(千葉県)
  • グランドサウナ広島(広島県)

2019 Best Movie

仁義なき戦いの舞台を見に博多座に行ってきた。

AKB48(グループ)のメンバーが総出演し、仁義なき戦いの舞台をやるということで、福岡は博多座へ行ってきた。はっきり言って気が狂っているとしか思えない企画だが、この国はアーサー王織田信長が女の子になる国なので、ある意味での納得感もある。まさか美能幸三も50年後に自分が女の子になっているとは思ってもみなかっただろう。舞台について触れている人があまりいなかったのでメモ代わりに思ったことを書く。

行きたいと思った理由は、自分が仁義なき戦いシリーズが好きであり、且つAKB48グループも好きで、且つ応援しているアイドルが出演するからだ。おれは仁義なき戦いシリーズ及び東映実録路線に対する思い入れを、ある程度持っている。大学時代にはじめて見た『仁義なき戦い』シリーズはただひたすらに面白く、また東映映画ひいては日本映画そのものに対する興味を抱かせる映画史的な広がりを含んでいた。深作欣二中島貞夫といった名前は自分の中で特別に響いてくるし、漠然と持っていた菅原文太松方弘樹、梅宮辰夫などなど(枚挙に暇がない)に対する"昭和の名優"的なイメージを凶暴で野卑だが魅力的な存在に一変させたのも『仁義なき戦い』シリーズがきっかけだ。

そしてAKB48も好きだ。正確に言うと、おれはAKB48グループに属している幾人かのアイドルのことが好きで、それは48グループというメジャーグループの持つブランドや安心感、距離の近さといったフィルターを通して好きになっている、という点でAKB48が好きだ。またそういうイメージと接触等の交流及びSNSを通して見て取れる彼女たちの人となり(のように思えるもの)が混ざり合い、彼女たちは自分の中である種の地位を占めている。常に理不尽な競争の中で「こうあるべき」という強い規範を強制される彼女たちが、ふとそれに囚われない人間らしさを見せてくれる瞬間に強く心が動かされる。舞台の中には今村美月ちゃんも出ている。お見送り(という劇中に出席確認することが何らかの理由で困難であっても遠い中はるばる来たんだぜというのを好きなアイドルに伝えるシステムがある)もあるし、これは行くしかない。

それにしてもAKBと東映実録路線が好きな人間の中で、両者が掛け合わされたからこれは最高の企画じゃないか……と思える人間が存在するのだろうか。お互いのことを好きであれば好きであるほど食い合わせの悪さに思いが至る。そもそも仁義なき戦いを舞台にしようと言うこと自体が難しいだろう。映画表現として突出した作品であればあるほど、それを舞台に翻案することは難しい。映画として優れているというのは映画以外で置き換えられない何か(それは例えば、深作欣二の生々しく無様な暴力描写であったり俳優たちの顔面及び佇まいの圧倒的な説得力であったり、多くは2019年の舞台で再現することが難しいものだ)があるからなのであって、ただ台詞回しをコピーすれば良いわけではない。そしてハードコアで血生臭い世界とふざけながらもキラキラとしたアイドルの世界(まあ今では血生臭い部分が隠せないくらいに露呈してしまっているが……)がどうやったら調和するのか。広能が坂井の葬式で銃を乱射した後、唐突にミニライブが始まったらどうしよう……。

不安を胸に飛行機に飛び乗り、博多に辿り着く。始まる前にかの有名な高菜ラーメンの店に並んだがどうも並びの進みが悪く(自分が急いでなければ何も思わないくらいです)、結局間に合わなかったので空腹のまま博多座へ。なんだかなあ……と思いつつもらったサイン入りポストカードに当選という付箋が貼ってありお見送りの撮影権利が当たったことに静かに喜ぶ。これはいい感じかもしれない。

本編は意外なくらい原作に忠実で、単純に言うと面白かった。ストーリーやセリフはほぼほぼ映画と同一。もちろん舞台向けに演出やセリフを翻訳している部分はそれなりの量があるけれど(例えば広能が土居を襲撃する前に女を突きながら「後がないんじゃ……」と呟く有名なシーンはマイルドに改変されてる)、特に違和感があるところはない。秀逸だったのは博多座の舞台装置で、ぐるぐる回って視点を動かしたり横だけではなく縦の移動が上手く使われていたり、あと映像をいい感じのタイミングでババーンと出したりと、ちゃんとそれなりに演出的工夫がされているのが伝わってきた。そのおかげでストレスなくアイドルたちの演技に集中することができた。

ちゃんとしたことを書くと、舞台としては原作と大きく改変されている部分があって、それは山守と盃を交わした広能・坂井・矢野・神原・槙原・山方の6人のチーム感が強調されているところだ。映画だと山守組の若い衆ということでチーム感というより群像って感じなのでそこの描き方は意図的に変更しているのだと思う。追加シーンとしては山守組の盃を交わしたあとに、この6人で酒を飲み交わしながら将来の夢を語り合う、的なシーンがある。あと盃を交わすシーン自体も映画だとズラッと並んで横一列になってるのを斜めから撮ってて出来事を撮ってる感・ドキュメンタリー感を強調する演出になってるんだけど、舞台だと横並びを前から我々が見るという構図になっていて、要は同期の桜感が強い風に演出している。また、これを受けて最後の広能が坂井をホテルに襲撃しに行くシーンも改変されていて、原作だと広能が坂井の部屋に入ったところ部下に取り囲まれてそこで説得されるって流れだけど、舞台では広能がホテルのロビーで捕まってそのまま車で向かった先が最初の6人で飲み交わした場所、で最期の会話をするという流れになっている。この改変は『仁義なき戦い』としては正直ウェットでわかりやすい感じすぎではあるものの、まあ一本串を刺していくためにはやむを得ない改変かなとも思うし、アイドルの青春感みたいなのと同期するところがあり、AKBで舞台化するということを踏まえれば全然悪くない改変だった。その代わり広能がガンダムSEEDのキラみたいに戦いを止めろ!!!!って言いながら右往左往する人になってるんだけど。

演技は結構みんな良いな~っていう(年齢に舞台観劇経験が伴っていないので演技の良し悪しがわからない)感想を持った。広能を演じる岡田奈々さんはマジムリ学園(舞台)のときもそうだけど雰囲気があって演技に筋が通っているのでちゃんとした舞台感みたいなのを出してて凄い。個人的に良かったのは瀧野由美子ちゃんで、マジムリ学園(ドラマ)を見た人ならあの衝撃的なまでの棒演技を記憶していると思いますが、その感情を無理に込め(られ)ない感じと、手足が長くて動きに無駄がないので日本刀を振り回すシーンが似合っていた。無駄がなさすぎてヤクザというか殺人マシーン感が出てしまっていて若杉なのかどうかは置いといて見てておもしろかった。今村美月ちゃんは矢野修司っていう主要人物の一人なのにどういう人間なのかわかりにくいという難しい役柄だったけどちゃんと存在感を出しててよかった。怪訝な顔で辺りを見渡すみたいな場面が多かったんだけどその表情もかわいかった。笑顔が素敵で、アドリブの時の頭の回転も早い感じで、そんで、そんで……。

ただ、全体的にシリアスな場面でお笑い風のアドリブが入ったりとAKB特有の内輪おふざけ要素も結構盛り盛りって感じでそこはAKBのノリに慣れていないとかなり厳しいものがあるかもしれない。というか決定的にある。おれは既にこのノリに浸かってしまっているのでアドリブを楽しむ彼女たちを見て笑顔になってしまったが。また、第二部がレヴュー48というあんみつ姫という福岡のやつがあってそれがAKB劇場の元ネタでみたいな感じだったんですがこれもなかなか。メンバーが個人というより集団として扱われているところが新鮮だった。皆さんは行ったことがないのでわからないと思いますがサンリオピューロランド感がありました。つまり宝塚っぽい。おもしろかった。

そういうわけで、舞台としてめちゃくちゃ優れているとか、仁義なき戦いの舞台として凄いというのは無いけれど、改変や演出の堅実な的確さと好きなアイドルたちが馴染みの深い役柄の演技をしているということで、案外AKBと仁義なき戦い両方のファンからすれば楽しめてしまった。原作レイプみたいなああいう発想が自分にはあんまりなくて、それは原作とそれをモチーフにしたものというのは違っていて当たり前だと思っているところがデカいかもしれませんが。そんな舞台とレヴューで3時間くらいやってたし、時間の都合で当選したのに行けなかったけどゆいりーのご案内とか当選してガッツリ撮れたお見送りとか色々特典もあってあと座席も4列目とかで普通に体験として面白かったです。仁義なき戦いが好きなだけの人には絶対にオススメしないけど、AKBグループが好きで且つ推しメンがある程度以上出てる人は行って損無いというか。広島死闘篇が広島市でやったら行きたいくらいには満足です。

そんな感じであとはウェルビー福岡行ったり湯らっくす行ったり水炊きとんかつ馬肉食べたり最高な感じの旅行でした。九州最高。

近況

正月以来書いてなかったが、最近の感じを適当に。

オタク

 5月現在ではオタクとしてのモチベーションはゼロに近いが、春先はめちゃくちゃ楽しかった。

 まず、3月の歌唱力ライブが非常に良かった。わたしの推しメンであるところの小田えりなさんと注目メンバーであるところの横山結衣さんが出ているということが参加したきっかけだったが全体的に驚きと音楽の楽しさがあって率直な楽しさにあふれていたと思う。自分がアイドルのライブでその感情を得られるというのは驚きだが、そうだった。これはそもそも歌唱力に着目したコンサートだけあって、2つ特徴があり、それが新鮮かつ逆説的にアイドルとしての溌剌な魅力を強調していたように思えたからだ。特徴とは「生バンドであること」と「カバー曲メインのセットリストであること」で、生バンドの有機的で肉感的な響きは彼女たちの歌と相まって真に迫った迫力をもたらしていたし、カバーされたJ-POPの曲は驚きこそないが時にアイドルのクリシェを逸脱していて興奮させられた。何度も書いたり言ったりしていることだけれど、自分はアイドルがアイドル的な振る舞いをしている中にどうしても現れる人間らしさみたいなところに惹かれてオタクをやっているので今回のライブのようなフィジカル重視のものは好意的に反応してしまいます。あとはAKBグループ末期最後の希望、陸抗こと矢作萌夏さんは本当にすごかった。

 そして河口湖で行われたチーム8の5周年コンサートも非常に良かった。特に2日目日曜日の夜公演は今まで見てきた中でのベストライブの1つだった。10年くらい色々なライブに行き続けているとライブ自体がどうこうというの以前にどういうコンディションでどういう感じで見るのかが重要になってくるのだが、それがかっちりとハマっていたのもあるのかもしれない。土曜は河口湖のコテージに泊まってオタクとサウナに入ったりだらだらと遊んだりしながら過ごし、当日は富士急でミニライブを見たり軽い接近イベントをこなしたりして徐々に上げていくのだからこれほどモチベーションが上がることはなくて、更にライブ自体もその期待に答えてくれるものだった。割と狭めの会場でそこそこ良い席だったこともあるが、オタクとアイドル双方の熱量も高く、開始5曲くらいのエイト曲パートで涙が出そうになった。白眉だったのはミュージカルパートで、ゴリゴリに会場全体を使う演出も結構良いんだけど、高校3年間卒業最後の日というシチュエーションと彼女たちの置かれている状況が奇妙にオーバーラップしながら48のアガる曲を連打していくのがたまらなかった。こういうのが好きというのは本当に自分はオタクだなと思うのだが、常にハードコアなサブカルみたいな態度ではなく、きっちりとオタク的欲望を持っているところが自分っぽいとも思います。全体通して本当に最高だった。

 また、その翌週に福島Jヴィレッジで行われたミニライブも最高だった。これは30分のミニライブだったのでまあ普通かなと思いきや、パフォーマンス自体なんか気合入った感じだったしめちゃくちゃ近かったし最前だったし快晴で良い写真撮れまくるしでこういう外イベの最高峰って感じだった。暇な時間はウイイレとかやって過ごせたのも良かったし、ホテルで食べる飯も良かったしオタクと音楽とか聞いてあがれたのも楽しかった。

 それ以降、例えばGWなんかは基本的に握手だったんですが握手はイベントというより呼吸に近いので特に言及することはないです。好きなグループのメンバーは多くがやめてしまうし(では終わりなのかと思いきや、そこで残るやつらがまだ終わらせないとアツくなってるのにはめちゃくちゃアツくなったりもしてるんですが)NGTは相変わらず最低だしでどんどんテンションが下がって今に至る。

音楽

 なぜか90年代インディー名盤(Guided by VoicesとかModest Mouseとかあの辺です)を聞いたり、南ロンドン(Ezra CollectiveとかThe Comet is Comingとかあの辺です)の辺を聞いたり、あとはK-POPや洋邦問わずのヒップホップを聞いています。ライブにはあまり行けてなくてマズいなと思ったので最近フェス的なところに連続で行ったりしました。新興フェスFuji & Sunと優良企業Cinra主催のCrossing Carnivalです。

 Fuji & Sunは一日だけ、やけのはら(DJ)→七尾旅人大友良英スペシャルビッグバンド→cero →Hermeto Pascoal e Grupoって感じで見ました。七尾旅人は本当に久しぶりに見たけど歌心というか、弾き語りであるのに実験性もあって、しかしながら最後はポップに着地する感じがとても感動的でした。やけのはらとの『Rollin'Rollin'』とかそれこそ10年振りくらいに生で聞いた気がする(懐メロおじさん)。大友良英はギターが暴力的で鋭くてスリリング。あまちゃんの曲をやったと思ったらエリック・ドルフィーのカバーなんかもあり、ポップと前衛が同居してる……というより怒ってるのにSmile Likeナオトタケナカみたいな怖さが面白かったです。ceroは相変わらずいつ見ても最高。良すぎる。大トリのパスコアルはやはり期待以上というか、ブラジル音楽/ジャズ的で音楽的にめちゃくちゃ豊かに進行していく一方で、本人は女性とステージで踊ったり酒を飲んで奇抜に振る舞ったりと非音楽的佇まいをいくらやってもそれが音楽としてアリになっていく感じがユーモラス。しかし音を差し込んでいくとグッと艶やかな音になったりと完全に音楽に愛されている感じだった。いいフェスでした。良かれ悪かれではあるだろうけど、人も少なかったし。

 Crossing CarnivalはDos Monos→Ogre You Asshole→田我流→C.O.S.A→蓮沼執太フィルって感じで見ました。オウガが今のモードだなって感じでますます魅力的に感じたり、田我流がラッパーとして理想形に近づいていたりと楽しいサーキットイベントでございました。てか夏に向けてもっとライブ色々行きたく思います。

映画

 国立映画アーカイブ深作欣二特集に行ったりしました。『血染の代紋』『現代やくざ 人斬り与太』『人斬り与太 狂犬三兄弟』の3本は深作欣二サム・ペキンパー三部作として全人類が見るべき。旧作ではユスターシュ『ぼくの小さな恋人たち』(ママと娼婦は結局見れませんでした)とかフリードキン『恐怖の報酬』なんかが見て面白かった。新作では『エンドゲーム』が映画としてどうこうっていうよりこの10年の集大成としてわたしは素直にめちゃくちゃ感動してしまいました。あの時見たMCU作品はあれだったなあ的記憶と結びつく感じというか、連続ドラマ化する映画ならではの楽しみ方を最大限享受させていただきました。あとは『HOMECOMING』と『山下達郎 シアターライヴ』がそれぞれ形は全然違うけどポップ・ミュージックの素晴らしさを体現していて素晴らしかった。

その他

 がんばって本を読んでいます。相変わらずアメリカ人が書いた小説とかをちょこちょことやってます。あとはそろそろ夏の服を色々買いたいと思いますので、皆さんよろしくお願いいたします。ですます調とである調が入り乱れてててすいません……。

1月

 あけましておめでとうございます。年間ベストは旬を過ぎたのでやれません。

 正月は本当に何もしなかった。精々サウナに行ったりして実家で本を読んだり音楽を聞いたりがほとんどだった。まあそんなものでしょう。しかし何もやらないとやらないで段々と精神がおかしくなってくるもので、マッチングアプリを一瞬やってはいいねを満足できるくらいゲットして、やめての繰り返し(というほどはやっていない)だった。焦燥感は確実にあるんだけど俺がやりたいこととは違うという確認作業をやっているようなものです。

 5日からようやく動き出してシネマヴェーラ渋谷蓮實重彦セレクトハリウッド映画特集へ。2019年初映画に『拾った女』『天使の顔』と縁起が良かろうはずもない2本を決める。特に『拾った女』は本当に良かった。ブン殴り合いながら恋に落ちていくカップル!ベストに上げる人が多いのも納得。しかし個人的にフラーベストは『東京暗黒街 竹の家』で揺るぎないのであった……。流れで翌週『危険な場所で』『その女を殺せ』なんかも見た。ニコラス・レイリチャード・フライシャーの二本を劇場で見れることに感謝(蓮實チルドレン風物言い)。どっちも最高最高最高だったけど『その女を殺せ』のありえないくらいの面白さは全人類必見って感じでした。でも『危険な場所で』のノワールが奇妙なラブロマンスに収束していく感じもバカヤバくて結果両方最高でした。

 その辺りからNGTの最悪な話が始まって、これは何が最悪かというと女性が暴行を受けているということにあまりに誰もが向き合っていないということに尽きると思います。えーってか被害者に謝らせてるのってありえないでしょう普通に。この文化が持ってる恥ずかしさみたいな話は(もちろん恥ずかしいという気持ちは持ち続けなくてはいけませんが)今回直接は関係なくて、事件が起こってしまって被害者がいるのであれば、被害者のケアだとか事件の再発防止とかは通常の感性を持った組織であるならば完全にしっかりとやらなくてはいけないのに、そういったことに対する意識があまりに低すぎるのではないかと。そういったことに何ら見通しを立てないままとりあえず騒ぎを起こしてすいませんでしたと言わせてしまうこの体質、ありえないです。 

 もちろん、このカルチャーのプロパーとしては、アイドルっていうのは信頼関係(これは人と人のというより、アイドル自体は別になんでもないんだから俺らが彼女たちのことをアイドルだと思わないとそもそもこれは成り立たないゲームじゃんか、というような話です)という幻想をいかにして保っていくかというプロフェッショナリズムであるにも関わらず、そういったものをあまりに考えていない事後処理はもうどうしようもないなあって思います。でもまあそれはどこまでいっても二次的な話なのでどうでもいいことでもあると思います。あと同僚がめちゃくちゃに追い込まれて社会的にもこういう話になってるのにも関わらず、平然とSNSをやっていたりするNGTのメンバーについてはそれが仕事だし仕方ないこともあるというのを踏まえた上で、しかし最終的に自らの責任でそれをやってしまうその判断にドン引きしてしまいました。

 あと別にこの話についてイラつきまくってるから48グループのファンをやめるとかそういう話でもないです。続けるかやめるか1か0かの話ではなくて、アイドルの面白さっていうのが、今回みたいに見ていられないくらいの女性蔑視的なひどいものと結びついてしまった時、そしてアイドルに感じている面白さとある種の女性蔑視的なひどさが表裏一体のものであったとしても、それでもダメなものだけがダメであり、面白いものについてはなお魅力として捉え続けていきたいと思っています。だし、だからこそ俺らはちゃんとダメなものをマシにしていく努力を同時にし続けなければいけないと思うんですよね。そしてそのことが彼女たちに感じている魅力だったりこのカルチャーの面白い点を減退させる行為だとは思ってなくて、その意味では信じたいのかなというところです。っていうのを事件が発覚した次の日にSTU48の岩田陽菜ちゃん瀧野由美子さんと握手して感じました。2人とも最高!!!!!(僕は情緒不安定ではありません)

 その後TDCホールで通算5回48グループのコンサートを見たので、それぞれ少しずつ言及します。

チームKコンサート

これはよくわからなかった……。見えにくい位置だったのと俺がチームKのノリみたいなのあんま好きじゃないからというのと推しメンが最後にちょっとだけしか出なかったからだと思います。『RESET』からの流れは良かった。

チーム4コンサート

俺が見たいアイドルのコンサートってこういうのなんだよね!!岡田奈々さんと村山彩希さんの2トップにエースのずっきーという三頭政治。8はなぎちゃんと大西がいい味出してて更にお七の存在感、そしてハマちゃん、はっつ、行天、彩音……最高。2018年ベストSong & MVの『猫アレルギー』的世界観というか、高校ダンス部をイメージした感じでコンサートが展開されていくんですが、おっさんなのでこういう青春みたいなわかりやすいやつを見ると無条件で幸福になる。『挨拶から始めよう』~DMTを挟んで『青春のラップタイム』への流れが素晴らしすぎて中盤は若干ダレたけど全然良かったです。

チーム8コンサート朝昼

チケット持ってなかったんだけどノリで行ったら最前で見れたので楽しくないはずがない。朝はちゃんと踊ってキメるみたいなのが意外に少なかったのでおやおやってなったけど、長ちゃんセンターの『夢へのルート』はかなり喰らいました。でも全体的に曲は昼の方が好みだった。でもまあ最前ドセンで見ればなんでも楽しいに決まってるのであまり言うことはないです。

岡部麟ソロコンサート

これも良かった。うまい具合にまとまっているというか。合間に映像流したりゲストとかコントもやったりと楽しませるぞという構成が、集中力がないのでAKBの曲を聞いてるだけでは飽きてくる自分としてはありがたかった。

 

なんか書いてて飽きてきたんですが、そんな感じでTDCを楽しんだ翌週は握手を楽しんだりしたりしました。あと日記にしてみて1月の記録を見返して本当に終わってるなーって思いました。助けて!

2018総括①

 11月、12月についてまったく何も書けていないが一年を総括する。

2018総論

 結論から言ってしまえば、2018年はここ数年で一番楽しい1年だった。いや~楽しい、本当に楽しかった。遊びに行く回数も増え、笑うことも増え、自分の時間の過ごし方も充実したし、嫌な思いをすることは減った。楽しい要因は色々あるが、何よりオレにとっては1年間を通して自分らしくやれたことが大きい。自分らしさってなんだ?って感じですが。早い話が自分が好きなことだけをやって楽しむことに集中出来たのが久しぶりだったということです。自分自分と言っても確固たる自分があって良かったねという話ではなく、オープンマインドに色々やってみたら、楽しいことと楽しくないことが見えてきたという感じ。で、そこからようやく自分が浮かび上がってくるような感じなんですが、それは自分探し的な発見というより、むしろ"これはアリでこれはアカン"のボーダーみたいなのがこれまでの人生で培ってきて割と自分でははっきりあるなあとか思っていたのですが、そのボーダーが揺れる感じというか、新しいものへの興味を持つことがたくさん出来たのが、特に刺激的だった。

 具体的には海外ドラマ・旅行・カメラ・ジム・ファッションとか今までそれほど興味がなかったことに興味を持つことが出来た。更にアイドルを見て大声を出すことも本格化出来たし、それに伴う地方の魅力的なのも触れることが出来た。色んなところに行った。ネパールは最高に楽しかったし、富山・大分・新潟とかも意外なほど魅力的だった。そしてアイドルを応援するのであれば自分に向き合い、自分をマシな方向性に進めなければいけない。そう考えた結果、食事と運動を見直すことで、体重を12kgくらい絞ることが出来たし、握手会に行く前に服を買うことを自分に義務付けた結果、服が好きになった。他者に向き合うことで自分に向き合うことが出来るのだなあと改めて思いました。それも楽しかった。

 まあそういう、自分との関係性で色々考えようと思ったことは、例えば音楽もそうで、ストリーミング全盛でもはや1枚1枚をじっくり聴き通すことは難しく、高品質なポップスで流行を追ってるだけで終わってしまいそうだったので、聴取の意識としてかなりパーソナルに依ったものをよく聞くようにした。それは「作家的」として片付けられるような類のアーティスティックなもの(小袋くんのやつとか)というより、割と少数の人たちが狭いコミュニティのために作った音楽であったり、自分自身が価値を見つけないとどうにもならない音楽であったりとか、まあそういう類のものである。例えばオレはアイドルソングをよく聞いているのだが、それは音楽としては自分のような人間のために作られているというわけではなく、音楽単体をとってみればどうでもいい類のものなのだが、自分がライブに行き、好きなアイドルが歌うと何故か良いと思ってしまう。音楽それ自体のみを楽しむということは到底無理なんだということに自覚的というか、そういうのも合わせた体験の中で音楽を聞くことが多かった(PRODUCE48でK-POPの良質さに気付いてからは単純にそれでいいとも思えなくなっていったんですがそれはまた)。ただ、だからといってドメスティックな音楽だけで足るわけではもちろんなく、世界に目を広げてみると皆々様が自分に求められているものと自分であることの表現の折り合いをつけた素晴らしい音楽がたくさんあって、そういう感じと今年の個人的な方向性が結構合致してわかるな~って思うことも多かった。 ただ、だらだらアイドルやったり体鍛えてたりしたせいで、映画の鑑賞本数がめちゃくちゃ減って、ここ数年では久しぶりに100本見ることが出来なかった。体感として全然見てなかったし、平日はジムやサウナに行き、休日はアイドルやミュージシャンを見ていることがほとんどだったので。

 まあそれ以外は特に悔いもなく、ほんとに今年はやりたい放題させていただきました。自分のことが好きになれたというか、自分がやりたいことをやり続けることって自分がクールだと思うことを選択し続けているわけで、そんな生活をしていたら自分が好きにならずにはいられないでしょう。まあなんやかんや、そんな感じで自分であることを楽しんでいたのが2018年だとすれば、年の瀬には社会的の構成員として色々なことに責任を取っていくことも自分であることに当然伴うべきものではないかと思ってくるわけで……。そのあたりのケジメをつけるべきなのか、ケジメをつけずに怠惰に過ごし続けることが果たして許されるのか。つうかそれでやり過ごしたあとに何が残るのか、しかし……というその辺を2019年は考えていければ……いや、考えるよりも行動で示していければという感じです。押忍。各論は年末年始の暇な時間を使ってぼちぼちまとめていきます……。

9/15~10/31

 9月中盤はネパールに行った。もう3か月ほど前か……。しかし、まじで楽しかった。ちゃんとしたホテルに泊まって15万くらいで安くはないが高くもないし(多分工夫すればもっと安くなるはずだが面倒だったので)、なんか人々もわりとぼんやりしていて安心だった。ネパール料理が好きなら絶対楽しめるし、そうでない皆さんも是非行くことをオススメする。物価も安いしね。結構写真撮ってるし濃密な時間だったので忘れることも多分無いでしょうって思ってたら旅行記みたいなのは別にいいや……って感じになってきた。なので、食べたものの写真を貼ってお茶を濁すとする。

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 ウマそ~~~~~!!!!!(終)

  日本に戻ってきてからの土日では濱口竜介寝ても覚めても』を見て驚嘆したり(濱口竜介のベストではないがメジャー作品でも確固たる濱口竜介作品で、つまりは本当にすごかった)、友人と渋谷のエリックサウスへ行ったりした。友人が色々前に進めているのを知って焦ったが、実際には焦っているわけではない。それはそれとして自分は自分の思うがままやっていく以外出来ない。やりたくないことはやりたくない。『懲役十八年』昔の戦友に対して「俺は変わりたくないんだ」と絶叫していた安藤昇の気持ちです。もはや居直り強盗のようだが、仕方がない……。翌週は雑務で潰れる。

 翌週は朝霧JAMに行こうと思っていたのだがなんやかんや面倒になって回避してしまったため、流れでErectionに行った。スティルイチミヤとオジロのライブで暴動のように盛り上がった。帰りに仲間と中目黒のカレー屋アカマルでカレーを食べて(めちゃウマかった)帰った。話の内容は多分インスタのマブの話とかペアーズの話とかだったと思う……。基本的にいつも同じなのでよくわからないが……。翌日は早稲田松竹アキ・カウリスマキ希望のかなた』とウェス・アンダーソン犬ヶ島』の二本立てを見た。『希望のかなた』ラストの彼岸を見つめるショットはパブリック・イメージなカウリスマキとは違うかもだけど、彼の作った映画の中でもっとも印象的だったし、素晴らしいものだと思う。『犬ヶ島』は本島に戻る船の中のシーンにこれぞウェス・アンダーソンだな~と思いつつ号泣。単純なオリエンタリズムともまた異なる謎の日本描写2本立てでありました。

 翌週は金曜夜からCircus TokyoでRedbull Music Festivalのクロージングパーティーに。Lil MofoとBeautiful Swimmersが聞きたかった。Lil Mofoのクールで治安悪めのセットもひたすらに楽しいBeautiful Swimmersのセットも最高だった(あんまパーティについては書かない方向でやってます)。

 翌日は……というか、3時間くらいだけ寝て郡山へ行った。ふくしまキッズフェスタに推しメンが出るから、前乗りで行った。BGMはBeautiful Swimmersのmixで自分を鼓舞しながら行った。行くしかなかった。ここまで来るとSALUの"「たまに辛くなりますか?」 これが夢だったから特にはねえな"の心境です(嘘)。郡山に着いて駅を出るとそこは……地方都市だった。富山とか奈良とか大分とかどこもそうだったけど、新幹線停車駅というのは実際のところ均一化されていて、そこには特に色気だったりローカル色とかはなく、それなりに発展しているが特に強力な魅力もないような場所である。疲れを取るためにだだっ広いスーパー銭湯ロウリュウあり、だだっ広い水風呂ありの素晴らしいサウナだった)に行き、食事も車がなければ微妙な感じだったので、郡山のコメを使った高評価のおにぎりを買い、ビジネスホテルで寝る……。いや、なんて辛い旅なんだ。しかし本当に辛いのはここからで、早朝4時に起きて大浴場の鍵開けをして体を清めたらタクシーを呼び、一路郡山自然の家へ向かう。タクシーの運転手さんに「あれ?子どもが行くイベント……だよね?」とか煽られながら5000円分の距離を行った。5時くらいに着いたので整理列(らしき何か)にセノビーを置いて、5時間くらいただ待機した。思い出してるだけで心が折れそうになるがこれも推しメンの為だから仕方がない。その後更に3時間ほど待ってようやく30分ほどライブを見た。いや、もういいだろう、俺は限界なんですよ……。そんな辛い気分になったが、ライブを見て写真を撮ったのは楽しく、まあトントンかなという気持ちになりました。来年もし同じイベントがあったら……どうすればいいんだろう。それはその時考えよう。バスに乗って普通に新幹線に乗り込み、帰った。まあ色んな知り合いに100回くらいいかに辛かったかを喋ったので、詳しい話が聞きたい人(いない)は現場で声掛けてください。

 翌週は『イコライザー2』(いい感じの佳作!)見て、深夜にISSUGIのリリパに行ったあとに握手会に行くなどした。それにしてもBESのライブ見れたのはあがった。『Rebuild』の曲とかもやってたし、ラップは本当に健在でライブも格好よかった。ISSUGIは常にイケてる(あんまパーティについては書かない方向でやってます)。昔はクラブイベントと握手会回すとそれなりに2つのカルチャーを横断してる感じが自己満足ではあっても充実感あったけど、今となってみるとただ単にスケジュール管理と我慢ができない困った大人感が強すぎるなあと思ってます。まあそれはそれで良いでしょう。握手は山田杏華ちゃんの飾らないシンプルな対応と歌田初夏さんの真っ直ぐにサービス精神豊かかつ自分であり続ける姿が眩しかった。俺は本田仁美さんが2年半の時を経てチーム8に戻ってくる時、この2人がどうなっているかを見届ける覚悟がある……。翌週は舞台・マジムリ学園を2回見たり、『ファントム・スレッド』やマキノ雅弘『剣雲鳴門しぶき』を見たりした。後者は昔からめちゃくちゃ見たかったやつで、確かに阿波踊りをめちゃくちゃにやりながら気付けば全てが終わっているパワーがヤバい。めっちゃ元気出た。あと1LDKのサンプルセールでシャツを買ったりピザを食べたりして盛り上がった。10月はそんな感じでございました。ここから俺はPRODUCE48にハマっていくのだが、その話は次に書きます。

近日に思ったこと

 日記とは別口で最近考えたことを適当に。

 最近服に興味が出てきて、よく調べている……。若者の時に特に興味がなく、BEAMSとかそういうセレクトショップで適当に買って終わらせていたので、自分でもびっくりしている。握手会に着ていく服を買ってるうちにだんだん好きになってきた。もちろん自分に特にセンスがあるというわけではなく(だから好きになれなかったというのもあるかもしれない)、ハイセンスな店に入るだけでウワッ俺浮いてるな……などとめちゃくちゃ汗をかく毎日である……。個人的な方向性としてはトレンドとかハイセンスとかにはあまり興味がなく、日々の普段着を上質なものにしていきたいという思いが強い。気に入った服に袖を通すと気分が上がるし、何やら自信も持てるもので、更に言うと(歳がどうこうっていうのはあんまり言いたくないけど)この年齢になって新たに興味が沸くことが出てきて、熱中とまではいかないが色々自分から動きたくなれていること自体が嬉しい……。

K

 音楽や文化に優劣など無いと言えれば楽なのだろうが、実際にはそれは確実にあって、優れた音楽が好きな人間はセンスがいいし、劣った音楽が好きな人間はセンスがないとされる。AKBの何枚目かのシングル『NO WAY MAN』とIZONEのミニアルバムのティーザーが同時期に公開されたのを見比べて強く思った。

 もはやアイドルシーン全体を見渡しても音楽性は様々で楽曲の強度も高い水準のグループがポンポンといて、そのこと自体は喜ばしいことであると思うのだが、個人的にはそういうアイドルにあまり興味が無くなってしまった。別にアイドルでその成分を補給する必要がない……というより優れた音楽をアイドルが歌うことの面白さというのはもはやあまり感じられなくなったという方が正しい。今ハマっているのはそういった音楽的な正当性が一切ない音楽をそのまま、好きになることだ。オレは『へなちょこサポート』を聞くと気分が舞い上がってくる。理由は深くは言及しないが(わかる奴にはわかるんだ、こういうのは)そういったオートクチュール的な、自分と小さい範囲だけで成立し完結する音楽の楽しみ方をアイドルに求めている。大量生産大量消費の中でそれをやることが面白いと思える……。

 というのは前置きで、AKBとIZ*ONEである。そういうわけなので『NO WAY MAN』は2018年に聞くに堪えない音楽性の曲であるが、しかしだからといって優れていないかどうかはわからない。アイドルを聞くのに音楽は関係あるが関係ない。それだけではまずいが、自分はAKB以外の音楽もたくさん聞いているので問題がない(と自分に言い聞かせている)。……ということをわかっていてもなお、やはりIZ*ONEの上質なプロダクションと映像センスが融合したなにかこう、新しいものを見ている感覚というのは素晴らしく、嫉妬してしまう。

 ……実はここまではティーザー映像を見た段階での感想なのだが、MV本編とショウケースコンサートを見たら比べるのがおこがましいという気分になりました。俺は美意識がふんだんに盛り込まれた画面とトラックショットが大好きだ。出だし、ウォニョン→ミンジュの流れから最高。スムースなダンスを正面から捉えたショットと早いテンポで交差するソロのカット、その全てが洗練されていて魅力的だ。本田ひぃちゃんのキャンディな歌もこれほどまで上手く入れ込んでくるかーって感じだし、イェナのラップパートはこの曲で俺が一番ぶち上がった部分。まさにALL EYEZ ON ME、まるで2パックである。スーツケースに入ってるイェナかわいい……。端正なラップに被せられる怖い男のスクリュー声パンチインもかっけえ。そしてナコヤブキのジョーカー感、東映映画で主要キャスト紹介が終わって最後に出てくる重要キャラ感(『沖縄やくざ戦争』の千葉真一、『博徒外人部隊』の安藤昇なんかを思い出してくれ)も最高に誇らしいではないですか。全体的にUSトレンド(BTSも取り入れてた)のラテンフレイヴァーが心地良く、EDMみたいに射精しますよ!しますよ~~~~!みたいな展開じゃなくて微温のまま進んでいく感じもまた新鮮。3連符ノリもガンガン出てくるし超今っぽい……。

 いやー正気ではいられない。カルチャーというのはどんなに大きい産業になってもそれが良いと思って金を出す消費者に支えられていて、受け手である彼らがどのようなことを考え、どのようなことを重要視するかによって大きく変わっていくものだと思う(それはアメリカの映画や音楽、ドラマを見ていれば誰でもわかる)。翻って見ると俺が好きなAKBというのは一体何なのか……かわいい女の子の美しい姿を見たいという欲求とそれへの回答としての作品であることは変わらない(だから込められてる感情とか意識は同じくらいしょうもないとも思う)はずなのにアウトプットがなぜここまで違うのか。などと絶望してみるのは容易いが、問題は俺が『NO WAY MAN』の劇場盤を性懲りもなく買い続けていることにある……。いや、さすがに枚数を減らしてその分はIZ*ONEのEPをフィジカルで買ったけど……。なんのエクスキューズにもならないのはわかってます。それにしてもこれ見て欅坂とかをまだ反抗のモチーフとかそういう視点で好きでいられるのか?日本の若者たちは……。俺はそれが怖いよ……と突然坂道(というより坂道に金を出されてデカい声で騒ぐ企業とそれに乗っかる人たち)叩きを展開して終わります。