2015年間ベスト

今年は全然音楽聞けませんでした!映画も新作の10倍くらい旧作ばっか見てたので歯応えのない年間ベストになってすいません。

年間ベストアルバム

  1. Kendrick Lamar / To Pimp a Butterfly
  2. Soichi Terada / Sounds from The Far East
  3. KOHH / DIRT
  4. Kamasi Washington / The Epic
  5. Jamie XX / In Colour
  6. cero / Obscure Ride
  7. Gonno / Remember The Life is Beautiful
  8. Jim O'rourke / Simple Songs
  9. Tuxedo / Tuxedo
  10. 東京パフォーマンスドール東京パフォーマンスドールZEPP TOUR 2015春~DANCE SUMMIT“1×0(ワンバイゼロ)”ver3.0~

以下感想を短く。①どこまでも誠実な歴史と音の探求の成果。アメリカ史(のようなもの)と個人史が交配しながら猥雑なものへと変容していく姿がとてつもなく美しい。これを年間ベストの1位に置くことに若干の気恥ずかしさを覚えつつ、そうした自意識を乗り越えるような大傑作であることを確信している。

②オプティミスティックでハッピーな、爽快で美しいディープ・ハウス。ハウスのクリシェを用いつつも、彼の基質が反映しているのか極めて作家性の高いものへと仕上げている。

③『YELLOW TAPE 3』とセットで。ヒップホップの面白さが横溢しているのは、KOHHが強奪による錬金術というこのジャンルにおけるきわめてオーソドックスな手法を用いているから。

④往年の「スピリチュアル・ジャズ」より理屈的で、野蛮というよりインテレクチュアル。ただしカマシは野生を放棄しているのではなく、客観視しながら統制しており、だからこそこの3枚組のアルバムには興奮と持続が融合している。ライブも素晴らしかった。

⑤今年は多分クラブに行き夜を明かすということをしなかった……。のもあってか、例年よりクラブ・ミュージックを熱心に聞くことは少なかった。だからこそ、なのか今年はこの静謐で瑞々しい「ハウス」に熱中した。端正な仕上がりだがつまらないわけではなく、ここにはソウルの息遣いがある。"All Under One Roof Raving"を聞こう。

⑥ブラック・ミュージックの"Replica"を標榜しているが、単なる模造品ではなく、様々な音楽の断片が散りばめられており、またそのどれでもないというまさに"Eclectic"なアルバム。マジック・リアリズム的手法で世界を立ち上げていく様も見事。

⑦バレアリックでエレガント。ダンス・ミュージックというよりも更に瞑想的で、ドラムレスの曲の美しさときたら……。②と併せてどんなシーンでもよく聞いていて、毎日を彩ってくれるアルバムだった。

⑧チェンバー・ロックとプログレッシブ・ロックが大きな参照元としてあるとしても、どう調理すればこうなるのだろう。コンパクトに仕上げている点にも驚嘆。切っても切っても別の切り口が出てくる、魔法のようなアルバム。"Eureka"より好きかも。

⑨昨今のムードの一つの決定版。カッコいい。

⑩凄まじい熱気と集中力に満ちたライブの記録。音源が今一つ弱かったこのグループの魅力を知るにはもってこいのアルバムでもある。

 

年間ベスト映画

  1. マッドマックス 怒りのデスロード
  2. ハッピーアワー
  3. インヒアレント・ヴァイス
  4. ラン・オールナイト
  5. ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション
  6. 海街diary
  7. ワイルド・スピード スカイミッション
  8. THE COCKPIT
  9. ブラックハット
  10. スター・ウォーズ エピソードⅦ フォースの覚醒

①誰が見てもどこから切っても面白いのは周到に作り込まれた映画世界を、ただ切り詰められたアクションによる語りでのみ、展開しているからだ。映画史に残るべき傑作にリアルタイムで立ち会えた興奮と共に、今年一番心に残った作品だ。というか単純に、こんな面白い映画他にある?

②物語の中心に据えられている女性4人の描き方は確かにラディカルで目を見張るものであるのだが、ここではむしろそうした性差を超えて孤独に彷徨える魂に肉薄しようとする。様々な映画的記憶が呼び起こされる作品だが、中でも最良のカサヴェテスに匹敵するかの如き被写体への寄り添い方は忘れがたい

③2時間超に渡ってダラダラとゆるく進行していく繋ぎはサイケでドラッギーだが、目を見張るべきショットは多くある。また、クローズアップの多用と長回しが画面に緊張感をもたらしている。カンの"ビタミンC"と長回しのタイトルバックはめちゃくちゃ格好いいし、ニール・ヤングの歌が響く中2人の男女が雨を走り抜くシーンは今年一番愛おしい場面だった。

④この監督と俳優のタッグによる前作『フライト・ゲーム』はあからさまなジャンル映画のノリが荒唐無稽で最高だったのだけれど、今作はシンプルな逃走劇。これまたリーアム・ニーソンが本当に素晴らしく、夜のニューヨークと殺し屋たちの闘い描写はたまらないものがあった。リーアム・ニーソンが素晴らしいといえば『誘拐の掟』も。

トム・クルーズトム・クルーズであることの凄さ。骨太なアクションも素晴らしい。

⑥最後のショットが特に良かった。

⑦車を空から落として空から襲撃しよう!!!という小学生レベルの発想筆頭に、年々迫力と荒唐無稽さを増していくCG多用の大味アクションだけでも満足なのだが、今回に関しては想いの映画でもあった。拭いがたい現実がどこまでも荒唐無稽であるべきフィクションを侵食していく姿に不快感がないのは、それが真摯な愛から成るものだから、と言い切りたい。

⑧映画が作られていく過程と曲が出来上がっていく過程が重ねられているのがおもしろい。本来なら切り捨てられるはずの試行錯誤そのものが既に映画であり音楽になっている。

⑨車が爆発してからこの世で最高の映画になります。

⑩視線や手などの演出が思ったより行き届いていたところが良かった。

『東京パフォーマンスドール~ダンスサミット ネイキッド2015夏』を観てきた

東京パフォーマンスドールのイベント、『ダンスサミット ネイキッド2015夏』に最近通っている。3クールに分かれており、1クールにつき6回公演をするのであるが、俺はそれぞれの最初と最後へ行くことにした。今これを書いているのは第2クールの2回目が終わった夜である。

ところで、なぜこのタイミングでこの文章を書くことにしたのか。その理由はひとつで、とにかくこれが本当に、素晴らしいライブであるからだ。興奮してしまった。見逃すべきではないと思う。心ある人は心して見ていただきたい。シブゲキという200人ほどしか入らない小さめの箱であることも影響しているのかもしれないが、とにかく一つの塊のような熱量と洗練されたパフォーマンスによって、とんでもなくダイナミックに彼女たちが一回毎に更新されていくその姿を目にすることができる。俺はその姿こそがアイドルを見る醍醐味だと思うし、だからこそ今この瞬間を逃してはならない。

ここでは第一クールについてちょっと振り返ってみたい。第一クールのセットリストでは"Mixed by CMJK"と掲げられていたように、今回は基本的にすべての曲が繋げられており、ノンストップに近い。「かわいらしく、アッパーな初披露曲→メンバーそれぞれのユニット曲→ダンサンブルな曲」という構成は入り込みやすく良い。かわいさに引き込まれ、メンバーそれぞれの動きや表情を注視していると、それを飛び越える強烈なダンスが披露されて、演者側にも観客側にも惰性が入り交じることがない。そして彼女たちのある種の誠実さは健在だ。昔の曲のリアレンジであっても、あたかも彼女たちのために作られたかのように曲に合わせた表情を作り、しなやかに踊る。オリジナルであろうとリアレンジであろうと新しい曲を披露する度に彼女たちの魅力は更新されていくし、楽曲の魅力と彼女たちの魅力が合わさっていくのを感じる。少しずつ変容していく姿を見つめるのはアイドルファンの一般的態度だが、東京パフォーマンスドールには思い切りの良さがある。あたかも全てをさらけ出すことを恥じているかのように、彼女たちはこの時期の少女たちにありがちな戸惑いや躊躇を見せず、ライブを重ねるごとに、確実にそれぞれが想定する良きものに近づいていく。その姿こそが感動的なのだ。

『Saturday Night Fantasy』~『Airport』までの流れは東京パフォーマンスドールのライブがスロースターターという言葉からは程遠いことを示してくれる。振付も曲調もどこかキュートで彼女たちの等身大の魅力が光るものだが、同時に今から行われるライブは手加減なしに突き進むという宣言をしているかのようでもある。ソロ/ユニット曲もふんだんに用意され、個々にスポットを充てているが、ここでも先の流れを引き継ぎ、流れを止めることはない。Avec Avec編曲(多分)の『ひらき直りも芸のうち』は当時としてもこれはどうなんだ?というC調軽薄リリックをらこちゃんとうさきちゃんが時代錯誤にカバーしていてバカらしくて底が抜けた面白さがある。NJS歌謡の『In The Arm of Night』の菜七ちゃんの力強いR&B系歌唱は必聴だし、『予感』のかほちゃん、『月に吠える』の小林晏夕は1人で場を支配するような強さを感じる。それから『Catch!!』~『東京ハッカーズ・ナイトグルーヴ』という90年代初頭の空気をまとわせたダンサンブルなディスコ(ジュリアナ東京とかそういうの)ソングの数々は頭を打ち付けるかのように攻撃的だ。

第ニクールも構成は同じだが、最初の流れとユニット曲が少し違うものになっている。ただし、ここで披露された『夢を』や『千夜一夜』という初期からある曲が少し色褪せて見えたのはそれだけ今の彼女たちが歩を進めているということなのだろう。『青空のハイウェイ』や『恋して女みがいて』という遊び心の多い曲が軸になっているのが印象的だった。

4回見た今、確実に言えることがある。それは今回のダンスサミットは、今この瞬間にしか見ることの出来ない、情熱的で真摯な、それはつまり、良きものを真っ当に創りだしていこうという意志に満ちたパフォーマンスだった。去年もそうだった。一昨年もそうだったのだろうし、来年もそうなのだろう。東京パフォーマンスドールのどこが良いのか、誰かに聞かれたら「良いものを作っているから」と堂々と答えたい。少なくとも、いつからか、もう何もかもを本気でやらなくなってしまって、しかも本気でやらなくてもなんとかなっていて、その状況に浸かっているだけの自分は、彼女たちのあまりに誠実なステージに少し泣いた。

2014年間ベスト

アルバムベスト

  1. D'angelo & The Vanguard / Black Messiah
  2. 銀杏BOYZ / 光のなかに立っていてね
  3. シャムキャッツ / AFTER HOURS
  4. KOHH / MONOCHROME
  5. YG / My Krazy Life
  6. Kassem Mosse / Workshop 19 
  7. Prince / ART OFFICIAL AGE
  8. Moodymann / Moodymann
  9. Run The Jewels / Run The Jewels 2
  10. Wen / Signals

以下短く。①未だ聞き込めてないのは承知の上で②この国で成熟することの苦闘がそのまま反映されたかのような歪みを持ったアルバム③グルーヴィーでマッシブなリズムが全体を稼働させていく力強さが今作のポイント④小学生が書いた作文を一生懸命吐き出しているだけと言われればその通りなんだけれど、それがアートになるのがヒップホップ。KOHHはミダス王の如く、周りの境遇や心境をすべて立派なヒップホップへ変換して吐き出していく⑤Gファンク最新版、レイドバックした不良の音楽⑥前衛性を抑えながら品質をキープし、洗練された夢見心地のダンス・チューンへ⑦EDMっぽい1曲目を聞いてこれはすわ殿下乱心かと思いきや、再生する毎にこの挑戦的な姿勢こそ美しいと思えるようになった。セクシーだし。少なくともゼロ年代以降では『Musicology』や『Rainbow Children』よりも全然いい⑧セックスから宇宙まで雑多に放り込まれた数々のものを一息に飲み込む深い度量のアルバム、人々に寄り添うおおらかさ⑨最強のふたりって感じですね⑩ヤンチャなグライム、ひたすらに格好良い

トラックベスト

  1. cero / Orphans
  2. Drake / 0 to 100 / The Catch Up
  3. Theo Parrish / 71st & Exchange Used To Be...
  4. Donnie Trumpet & The Social Experiment – Sunday Candy
  5. うどん兄弟 / 立入禁止
  6. 清竜人25 / Will You Marry Me?
  7. Herbet / One Two Three
  8. PUNPEE / Last Dance (We are Tanaka) feat. Sugbabe
  9. 岡村靖幸 w 小出祐介 / ラブビデオ
  10. DJ Souljah / CLUBに来た Feat. ERA, 鎮座Dopeness, 環ROY, TOP (Thugminati)

以下短く①"Let's Get It On"を引用しながら彼らのメロウネスはセクシーではなくセンチメンタルへと向かっている②ウータン魂を感じる③陶酔的なまでに官能的なマシン・ソウル④祝祭の歌に柔らかく暖かいホーンとピアノが彩りを添える⑤メンバー本人が書いたという歌詞がたまらなくいい⑥結果として現行アイドルシーンに異議を申し立てているが享楽的なディスコ・ビートにはわざとらしさがない⑦エレガントでポップな色っぽいハウス、誰もが好きなHerbert⑧内輪話として終わらせられないほどのロマンチック・チューン⑨岡村を敬愛するという小出の献身がこの曲のウェットさをポップ・ソングへ昇華させている⑩タイトルがいい

映画ベスト

  1. ジャージー・ボーイズ
  2. ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
  3. Seventh Code
  4. グランド・ブダペスト・ホテル
  5. フランシス・ハ
  6. アメリカン・ハッスル
  7. リアリティのダンス
  8. 新しき世界
  9. オンリー・ゴッド
  10. オール・ユー・ニード・イズ・キル

以下短く。①このご時世に「白いアメリカ」(なんてもんが存在するのかもよくわからないんだけれど)に拘り続ける時代錯誤な精神と、映画につきものなのは暴力と酷薄さこそであると言わんばかりに当然のように撮ってみせるイーストウッドの若々しさに今年は圧倒されました②宇宙空間で鳴り響くソウル・ミュージックの美しさ③この世にまったく有り得ないかのような風景は、虚無の器たる前田敦子にこそ相応しい。ゴロゴロとやかましいスーツケースの轟音は吉祥寺バウスシアターが閉館した今でも耳から離れない④まったく感傷的でも自意識過剰でもないウェス・アンダーソンの語り口に新たな境地を感じた⑤描いているのは停滞なんだけれど停滞を停滞として描かないこと、その停滞の連続は案外新鮮であるというクールな希望の込め方に⑥人の気持ちがわからない人を"詐欺""騙し合い"というテーマで描くのは単純に面白いと思う⑦虚構と現実が綯い交ぜになったものこそ現実を凌駕する力を持ち得る⑧カップリング最高⑨ポン刀の達人であるタイ人がカラオケする映画としか言い様がない⑩劇的でないトム・クルーズの死が飽きるほど見られるという凄い映画

 

良いお年を!

10/16

ジャージー・ボーイズ

これに関してはもうもしまだ見ていないのであれば、とにかく劇場に走って駆けつけて見て下さいよとしか言い様がない。映画には面白い面白くないという基準があってそれは重要だとも思うけれど、このクリント・イーストウッドの最新作はそういった物差しをはるかに超えたところに超然と存在するものでつまり、映画というものの圧倒的な正しさに満ち溢れているように感じられた(いや当然のように面白いんだけれど)。丁寧に登場人物に寄り添い厳正に時には冷酷に見つめながらそれぞれの視点で語らせることによって、フォー・シーズンズというバンドのまあよくある栄光と挫折、復活というお話をあくまでヒーロー的な神話としてでなく、青春とその先にある「よくある話」として、しかし美しく描き切ろうとする……この誠実さよ!『君の瞳に恋してる』が流れてからラストまでひたすら号泣しっぱなし。個人的には、この大きなことを書いてるようで実は幼少期から一緒に過ごしていた男たちを描いているに過ぎないという世界にチミノ的なものを感じてそこが無性に好きなんだけれど、これは老いたクリストファー・ウォーケンのダンス(『君の瞳に恋してる』!)に引っ張られすぎてるのかもしれない。あと平日昼間に見に行ったせいで周りがみんな老人だったのですが上映後「良かったわね~」とか声掛けられて大変でした。こっちは涙を拭うのに忙しいというのに!

東京パフォーマンスドール

最近ひたすらリリースイベントに通い握手へ行くというルーチンを繰り返していて、もちろんそれはそれでめちゃくちゃに楽しいのだけれど、ミニライブが『We are TPD』~『十代に罪はない』から始まり、ダンスサミットで2曲やって『Brand New Story』から新曲、という小さくおさまった印象すらある一つのショウケース的なものであるため(それは一見さんを呼び込んだり、あるいはふと興味を持ち無料で見てみようという人たちに東京パフォーマンスドールの魅力を伝えるための最良の提示だろう)彼女たちの爆発的な魅力というものを忘れかけていたのも事実。なので先日のduoでのライブは久しぶりに初期衝動というかやっぱり彼女たちはライブが凄まじいのだなという気持ちを思い出せて最高に楽しかった。というか今の彼女たちをライブハウスで至近距離で見られる時には決して見逃してはならないというレベルに達していると言い切りたい~。

さゆりんごピンチ

まず22歳で恋愛とか色々したい年頃の女の子に(女の子の気持ちのことなんて本当はまったくわからないが、自分のレベルで考えてみると、はっきり言って22歳の時は性欲に関しては無限にあった)恋愛禁止なんてことを強いるのが我々の中で何か当たり前の共通ルールとなっていて、いつのまにやらそれがシステムとなって存在してしまっていて、そしてその存在でオタクが安心するとかは特に無いくせにダメージを受ける人というのは絶対に存在していて、それは俺たちの好きなアイドルたち本人ですよね、ってことを俺たちはもう一度考えてみるべきではないだろうか。で、例えばこういう話について俺たちが取りうる最大限誠実な態度の一つとして、ガハハ!と笑い飛ばしてバカだな~ま、しょうがないな~と思いながらアイドルの虚構性を愛し続けるっていうのはそれなりに有効だと思うんだけれど、しかしこうした視線というのは案外複雑なもので、誰もが取りうるわけではない。複雑さに耐え切れなくてアイドルというものを単なる清純だとかそういったイメージの表象として受け取っていこうとしかしない人にとってそれは仕方がないことなのかもしれないけれど、というか落ち込むとかはわかるし俺もショックだけど、それが攻撃性に転化してしまうというのはどうも……。

こういう時に裏切られた!という人がたまにいるけど、よくわからない。アイドルの人たちが言ってる「ファンの人が大事」って言葉や態度と、男と付き合う行動っていうのは矛盾するものではないと思うからだ。彼女たちが「ファンの人が大事」と言うならばそれでいいじゃないか、というかそもそもそれ以上を望むことなんて出来るのだろうか?オタクとアイドルという関係性だからこそ、わからないことはわからないしわからせようとしているところをわかっていければそれでいいという割り切りが必要なのではないかとまあつまらない結論に至ってしまうのである。

ただ今回の件に関して一つ絶対的な真実として言えるのは男がクズであるということで、いやいやノートにやりたいこと100個書けば実現するとか言ってる男より『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の宇宙世界におけるアナログな響きが人間性を想起させる所に感動するだとか、プリンスの新譜の1曲目にレゲエホーンが入ってて卒倒するかと思ったみたいな話ばっかしてくる男の方がいいと思いませんか。どうでしょう、よろしくお願いします。

「東京パフォーマンスドール LIVE TOUR 2014夏~DANCE SUMMIT"1×0"ver1.0~」を観てきた

東京パフォーマンスドール LIVE TOUR 2014夏~DANCE SUMMIT"1×0"ver1.0~」の東京公演をO-Eastで観てきた。2回。14日と29日だ。

ところで俺が彼女たちに注目することになるきっかけは今年の6月29日に行われた"PLAY×LIVE『1×0』アンコール公演"の千秋楽に行ったことだ。まあつまりドドド新規なのだがしかし、渋谷の中央で見たその演劇は間違いなく、本当に素晴らしかったのだ。メンバーの顔も名前もパーソナリティも何も知らずに見た"アイドルの舞台"(しかも物語が連続していく中の最後の1つだけ)は真摯で情熱的で、豊かな音楽と鮮烈なイメージに満ちたものであり、率直に言って感動させられた。何故ならそこで展開されているものは観客との馴れ合い関係を前提とした下らないやっつけ仕事では断じて無く、正しく良いもの、優れたものがこの世に存在しているということを信じるメンバーとスタッフたちによって練り上げられた、何か良きものに肉薄しようとする意志に導かれた一つの作品であったからだ。

結論から言えば、今回のワンマンライブツアーにおいても『1×0』と同様の美しさがあった。それはつまり、言葉にならないエモーションに頼りがちな部分が大きいアイドルのライブ(しかしそれはそれで美しいし、否定されるべきものでもないと思う)において、何か絶対的に良きものを作っていこうとする意志があり、そしてその試みがパフォーマンスのレベルにおいて成功していることの美しさである。

今回のライブは、『1x0』でも見ることが出来たプロジェクションマッピングやLEDスクリーン、レーザーといった演出が随所に使われており、それは集大成のような(いや、集大成と評せるほど彼女たちを見ていないのが本当に口惜しい)趣があった。それと今回特徴的なのは「箱」を効果的に使っていたことだ。この公演の始まり方からしてふるっている。まず、メンバーそれぞれに合計9つの箱が用意され、箱にはメンバー扮する人形(ドール)が入っている。そこへ光が充てられ、音楽が流れることによってあたかも人形のねじが巻かれて、というより生命が吹き込まれたように躍動が始まる……という演出から本編に入っていくのだ。言葉で説明するとアイドルをただの人形として扱うが如きグロテスクな印象もあると思うのだが、むしろここではドールとしての固い表情ではなく、ドールがパッと光を得て華麗に動き出すその瞬間における彼女たちのクールな表現力を魅せることに重きが置かれていることが重要だ。そして曲中においてはその箱にメンバーが入ったり出てきたりするだけでなかなかに見応えがあるのだが、例えば箱の中でポーズを決めるとそれがプロジェクションマッピングと同期するなどといった凝った演出もされていて、奥行きのある視覚的な驚きをもたらしてくれた。後ろにあるためダンスの邪魔をすることも無く、空間を感じさせる上手い舞台装置だったと思う。

メンバーのパフォーマンスに関してもさすがにダンスや歌、煽りといった要素はハイクオリティなのだが、それを超えて彼女たちが多面的な表情や表現をしているところに好感を持った。曲の魅力を引き出すためのアプローチを丁寧に仕掛けていくことで、自分なりの表現というのがそれぞれ引き出されていくスリリングな感覚がそこにはあった。例えば『十代に罪はない』ではティーンの開けっぴろげで無敵な側面をアッパーに表現していた星来ちゃんが他の曲では(曲名失念、椅子を使うやつ)驚くべきほどに艶やかな表情をもってセクシーなダンスを披露していたり、『東京ハッカーズ・ナイトグルーヴ』でクールなロボットのように90年代的なサイバーパンクを一糸乱れぬダンスで表現したかと思えば、『DREAMIN'』で今この瞬間を生きる彼女たちが持つ煌きのようなものを個々の表現として鮮やかに見せてくれるのである。アイドルがステージに立つということはキャラを作ってそれを墨守していれば良いというものでは無く、流れた曲に適合させるために自分でも見知らぬ自分の側面を開拓し提示していく時にこそ本当の面白さが立ち現れてくるのではないかと思えた。見せ場ということから言えばそれ以外にもたくさんあって、いかにも歌謡っぽいメロディにガラージチックなパーカッションとアシッドなベースラインが偏執的につきまとう『おちゃめなジュリエット』は、らこちゃんの曲なのだが彼女の底が無いかのような笑顔と相まってヴィヴィッドな高揚感をもたらしてくれる。個人的には思い入れもある可愛らしいモータウン調の『The Perfect Day』がやはり素晴らしくて、これを見ると俺はシブゲキで見たフタバのことを思い出して泣いてしまうのだが、そうした物語的な感傷だけではない。それぞれのタップも見事だし、何よりステージ上を、まるでこの世に怖いものなど存在しないかのように自由自在に駆け巡る9人の、街中に幸福を撒き散らすかのように躍動する姿にこそ、涙を流してしまうのである。

俺が彼女たちに強い魅力を感じるのはパフォーマンスが絶対的に美しいからだけではない。彼女たちは、アイドルの価値を証明するためにはあたかもそれが唯一の方法であると言わんばかりにダンスとそれを魅せるための演出というシンプルな要素を真摯に高めていくが、純粋主義的な袋小路に陥ることはなく、あくまでオーディエンスと共犯関係を保ちながら盛り上げることで、楽しみそして楽しませていくことを目的としている。どの辺りがと指摘するのは難しいのだが(レスとか煽りとかはわかりやすいんだけれど多分それだけではない)、あくまで目線が観客に向いている感覚が確かに存在しているように思える。だから我々はハイスキルな彼女たちのパフォーマンスを、ただただ固唾を呑みながら見守るだけでなく、アイドルオタクとしてコールを入れることも出来るだろうし、あるいは彼女たちの動きに自らの体を同期させ一緒に踊ることも出来るのだろう。なんだか彼女たちの作り出すエンターテイメントに参加している実感があって、それは単なる見世物に留まらない、とてもエキサイティングな体験だ。

終わってみればアンコール入れて1時間45分ほどの時間。アイドルのワンマンライブとしてはいささか短めと思われるかもしれないが、いやいや実際に体験すると非常に密度の濃い(TPDはこういった表現をアイドルのライブに使うことの気恥ずかしさを覚えさせないものなのだ)内容で、これ以上でもこれ以下でもありえない理想的な時間だったと言える。場の空気が弛緩してだらけてしまうような瞬間は一度としてなかった。曲間をキックで繋げたり、あるいは衣装替えの時も舞台上の演出を用いることでただ暗転するだけという時間を作らない、ひたすらパフォーマンスを繰り広げていくという形式はオーディエンスの視線をステージに常に集中させ退屈させないのと同時にまた、ぶつ切りとなった感覚を与えることもなく、スタートから最後まで連続性の中でぐいぐいと熱量を上げていく。この連続的な流れに身を委ねると105分などあっという間に過ぎ去ってしまうのである。

そしてこれは特に最終公演で思ったのだが、アンコールのあとのMCもまた見事だった。高嶋さんの「このツアーを見ていない人たちが悔しがるくらい大きなグループになりたい」という言葉に、恥を忍んで言うと夢を感じた。俺はアイドルには、夢を見せてくれる存在であってほしいと思う。夢というのは俺の中では(言語化するのが難しいのだけれど)つまり、別に秋元康的な美辞麗句としての「夢」でも、メンバーが芸能界で成功してどうたらとかでもそういったことでもなくて、彼女たちのライブを見れば世界の最悪なことだったり日常の下らないことが吹っ飛ばされる感覚と地続きのものとして存在するものだ。つまり、このつまらない世の中の何かをぶち破ってくれるという確信だ。「こうあるべき」という理想ともちょっと違っていて、俺たちが勝手に生きて勝手に楽しいことをやってたら次第に世界の幸福の総量みたいなのが上がっていって、少しずつでもこの世の中がより住みやすい方向へ向かっていくんじゃないか?という意味での、まったく根拠の無い希望なのである。というかそういった意味での夢を持たせてくれるに足る痛烈な爽快さというものをステージ上の彼女たちは持っているのだ。困ったことに、アイドルという存在を信じさせてくれてしまうのが東京パフォーマンスドールなのである。

以上、底が抜けたように痛快で熱狂的な105分だった。楽しいだけじゃなくて彼女たちのことをどんどん好きになっていくのがわかる……。不満点といえばオタクとここで披露される楽曲の多くが音源化されていないということなのだが、まあ何にせよ、まだまだこれからなのだろう。秋にはZeppツアーや2ndシングルのリリースイベントが待っている。これからの中で出来る限り、彼女たちのことを見守っていければ俺はそれが本当に嬉しいと思う。

The 30 Best Tracks of the Decade

Pitchforkが2010-14のベストトラック200とベストアルバム100をやっていたので取り急ぎトラックの方を選んでみました。100も200もここで書いても誰も見てくれないと思うのでぐぐっと数を抑えて30曲選んでみます。あくまでも自分が音楽を駒にしているのではなくて、音楽が自分を駒にしているみたいなイメージで……。知らねーなって曲があったら(このブログを読んでくれるような優しい心の持ち主かつ聡明な方々には無いとは思いますが)曲名をコピペしてyoutubeでもなんでも検索かけてすぐ聞いてみてください。その時間、絶対に損はさせないと保証します。そんな30曲です。

30. Rustie / Surph (from "Glass Swords" 2011)
29. SALU / The Girl on a Board (from "In My Shoes" 2012)
28. Maria Minerva / I Don't Wanna Be Discovered (from "Will Happiness Find Me?" 2012)
27. Pev / Aztec Chant (2013)
26. ERA / Feel (from "3 WORDS MY WORLD" 2012)
25. 田我流 / Straight outta 138 feat. ECD (from "B級映画のように2" 2012)
24. Floating Points / Sais (from "Shadows" 2011)
23. Jai Paul / Jasmine(demo) (2012)
22. DJ Koze / Magical Boy (from "Amygdala" 2013)
21. わがままカレッジ / 可愛い子はだいたい彼氏がいる (2013)
20. Theo Parrish / 71st & Exchange Used To Be (2014)
19. Joy Orbison / BB (2010)
18. Ogre You Asshole / ロープ (from "homely" 2011)
17. LCD Soundsystem / Drunk Girls (from "This is Happening" 2010)
16. Vakula / I Wanna Dance With You All My Life (from "Leleka 2" 2012)
15. The Weeknd / What You Need (from "House of Baloons" 2011)
14. Osamu Ansai / Twiliht Featuring Yu Kamata (from "Lovin' Life, Lovin' You EP" 2011)
13. MSC / シークレットサービス (from "DEDICATED TO MAKI THE MAGIC - MAGIC MAGIC MAGIC" 2014)
12. 東京女子流 / Limited addiction (from "Limited addiction" 2012)
11. Gil Scott-Heron & Jamie XX / I'll Take Care Of U (from "We're New Here" 2011)
10. Factory Floor / A Wooden Box (2010)


Factory Floor - A Wooden Box - YouTube


9. Girls / Honey Bunny (from "Father, Son, Holy Ghost" 2011)


Girls - 'Honey Bunny' Official Video - YouTube


8. Kahn / Dread (2012)


Kahn - Dread (DEEP MEDi Musik) 2012 - YouTube


7. Jazz Dommunisters / XXL feat. MARIA, ICI  (from "BIRTH OF DOMMUNIST" 2013)
6. Deerhunter / Revival (from "Halcyon Digest" 2010)


Revival - Deerhunter (Music Video) - YouTube


5. Andres / New For U (2012)


Andrés - New For U - YouTube


4. Janelle Monae / Tightrope Feat. Big Boi (from "The ArchAndroid" 2010)


Janelle Monáe - Tightrope [feat. Big Boi] (Video ...


3. Drake / Over My Dead Body (from "Take Cere" 2011)


Drake - Over My Dead Body - YouTube


2. 乃木坂46 / おいでシャンプー (2012)

1. Frank Ocean / Thinkin Bout You (from "Channel Orange" 2012)


Frank Ocean - Thinkin Bout You (HD & Lyrics 1080p ...

8/3

目が覚めてiPhoneを眺めると、時間は目覚ましが鳴る予定だった頃よりだいぶ早くて5時間ほどしか眠れなかったようだが、不思議と疲れはほとんど無かった。前日の銭湯が効いたのかもしれない。いい時間になるまで他人の家の蔵書をダラダラと読んでいたのであまり実感が沸かなかったが、歯を磨いてシャワーを浴び家を出ることによってようやくTIF2日目が始まった。

朝一で向かったのはマイナビステージと名付けられたステージだ。この名称は……やはりアイドルという文化が本質的に産業であって、我々の行動は全て資本主義の車輪を回していることに他ならないという厳然たる事実を突き付けられるようで正直ぞっとしない。一山当てようとする業界人や野心に満ちた少女たちの餌に使われるのはもう本当にウンザリなのだが、夢みるアドレセンスはそんな心境にまさに相応しいパフォーマンスを見せてくれた。その後見たiDOL Street ストリート生 e-Street選抜 & w-Street選抜は楽曲がとても機能的に作られているのが印象的だった。ここでコール、ここでケチャ……それは一見自由に自分たちの意思で行われているようだが、実は厳格なコードに基づいて執り行われている。マイナビという企業が一見自由な選択肢を与えてくれるようでありながら、あくまでマイナビ的なフィルターや世界観を通した選択肢でしかないという現実とオーバーラップしているようだ。

そういったくだらない雑念を吹き飛ばすような面白さを見せてくれたのがlyrical schoolで、彼女らが太陽の下体をしゃかりきに動かしながらラップをしている姿を観ていると、ただただ音楽をみんなで踊りながら聞くことの楽しさを思い出すことが出来た。無銭エリアでもあったので一際オーディエンスも多かったようだが、今の彼女たちは観客が多くなれば多くなるほどエネルギッシュで高揚感に満ちたものを見せてくれる。楽曲が面白いアイドルというのが珍しいものではなくなった今重要なのは、一歩間違えれば偏狭なものになってしまいかねない音楽への拘りを、しかし音楽によって突破するパワーを持っていることだと確認させられるものだった。

その後違う友人とも合流し、次に何を見るか考えながらダラダラとアイスやピザを食べたりしていた。こういう時間が一番楽しかったということは記しておきたい。物販エリアで遊んだり色々あったりした後SMILE GARDENにてGEMとTPDを見た。GEMは確かに凄い。『Do You Believe?』なんてDiploを通過したK-POPのリズムへのアイドルからのアプローチという点で現行のアイドルシーンでも割りと珍しいのではないだろうか、しかも完成度は高い。そんな楽曲にも向こう見ずにコールを入れていく若いファンの姿を見るとリズム解釈の貧しさを嘆くよりもまず感心してしまうのだが、少しは共感もできて、何故ならあんな音楽を聞かされれば踊るか叫ぶかしか無いからだ。で、アイドル現場のコードに慣れてたらそりゃあ叫ぶでしょう。

東京パフォーマンスドールは昨日より更に短い20分のセットだったが、時間の制約をまったく苦とも思わないかの如く、一貫した魅力があった。タイトで、ダンサンブルで、古臭いのだけれど洗練されている。ところでTPDの持つこの古臭さは楽曲が90年代のものであることのみに起因するのではない。彼女たちは、何が素晴らしいのかという問題に対する判断を畏れず、素晴らしいものというものの存在を信じながら新しいものを創造していく。しかし、それは今日では絶望的なまでに古びた考えになってしまっているのだ。今時ダンスを高めていったって、観客を高揚させていくスキルを持っていったってそれはもはやなんでもない。しかしそれでも彼女らは自らの演芸を洗練の高みへと昇華させることをやめようとはしないし、だからこそ俺はTPDを称賛したい。演劇であれライブであれ、あるいはワンマンであれフェスでの一アクトとしてであれ、とにかくいつ何時見ても確かな魅力を感じられる理由は彼女たちがそんなある種の絶対性というものを時代遅れであっても信じているからなのだから。ま、そんなことはさておいてもカンカンに晴れた太陽の下、スピーカーの前でスペースを確保し、踊りながら見るTPDというのもとても良かった。音楽聞いてアイドル見ながら踊るのってこんなにブチ上がるものなのか。

その後DOLL FACTORYへ向かう。かなり長い入場列だったが、お目当てのTHE ポッシボーまでには間に合った。昨日のHOT STAGEでは歌と踊りの楽しさを素直に感じられるものだったが、ここではそれとはまったく異なる洒脱で洗練されたものを見ることが出来た。それは歌に重点を置いたとてもしなやかなパフォーマンスだった。こんなところにも芸達者で多面的な魅力を持つ彼女らの魅力を感じ取ることが出来た。

DIANNA☆SWEETも愛乙女★DOLLも初見だったが驚くほど面白かった。曲が特別素晴らしいわけでもルックスやダンスが特別優れているわけでも無いのだが、両者共にきっかけさえあれば容易に追いかけることになるだろうと思わせるパフォーマンスで、改めてこのジャンルにおける地力というものを強く感じた。

セクシーなきっかを経て再びTPD。更に短く15分のセットだったが素晴らしかったことはもはや言うまでもない。今年のTIFでそのパフォーマンスが見られるのは最後という所も含めてちょっとの感傷性があったのもまた良かった。

ベビレ、ポッシ、ぱすぽ、女子流はひたすら後ろのほうで騒いで踊っていたのであまり書くことがない。最後も祭りの大団円という形で楽しかった。振り返ってみるとそれほどアイドルは見れなかったし、意外な驚きというのもそれほど無かった2日間だったが、陳腐な表現を使えば夢の様な時間だった。友人たちと過ごす空間/時間としてあれほど楽しいことはそう無いような気がする。日焼けが未だに治まらないのだが、このあまりに色が変わった自分の肌を見るとあの時間が夢ではなかったことを思い出してもしまうのである。