『東京パフォーマンスドール~ダンスサミット ネイキッド2015夏』を観てきた

東京パフォーマンスドールのイベント、『ダンスサミット ネイキッド2015夏』に最近通っている。3クールに分かれており、1クールにつき6回公演をするのであるが、俺はそれぞれの最初と最後へ行くことにした。今これを書いているのは第2クールの2回目が終わった夜である。

ところで、なぜこのタイミングでこの文章を書くことにしたのか。その理由はひとつで、とにかくこれが本当に、素晴らしいライブであるからだ。興奮してしまった。見逃すべきではないと思う。心ある人は心して見ていただきたい。シブゲキという200人ほどしか入らない小さめの箱であることも影響しているのかもしれないが、とにかく一つの塊のような熱量と洗練されたパフォーマンスによって、とんでもなくダイナミックに彼女たちが一回毎に更新されていくその姿を目にすることができる。俺はその姿こそがアイドルを見る醍醐味だと思うし、だからこそ今この瞬間を逃してはならない。

ここでは第一クールについてちょっと振り返ってみたい。第一クールのセットリストでは"Mixed by CMJK"と掲げられていたように、今回は基本的にすべての曲が繋げられており、ノンストップに近い。「かわいらしく、アッパーな初披露曲→メンバーそれぞれのユニット曲→ダンサンブルな曲」という構成は入り込みやすく良い。かわいさに引き込まれ、メンバーそれぞれの動きや表情を注視していると、それを飛び越える強烈なダンスが披露されて、演者側にも観客側にも惰性が入り交じることがない。そして彼女たちのある種の誠実さは健在だ。昔の曲のリアレンジであっても、あたかも彼女たちのために作られたかのように曲に合わせた表情を作り、しなやかに踊る。オリジナルであろうとリアレンジであろうと新しい曲を披露する度に彼女たちの魅力は更新されていくし、楽曲の魅力と彼女たちの魅力が合わさっていくのを感じる。少しずつ変容していく姿を見つめるのはアイドルファンの一般的態度だが、東京パフォーマンスドールには思い切りの良さがある。あたかも全てをさらけ出すことを恥じているかのように、彼女たちはこの時期の少女たちにありがちな戸惑いや躊躇を見せず、ライブを重ねるごとに、確実にそれぞれが想定する良きものに近づいていく。その姿こそが感動的なのだ。

『Saturday Night Fantasy』~『Airport』までの流れは東京パフォーマンスドールのライブがスロースターターという言葉からは程遠いことを示してくれる。振付も曲調もどこかキュートで彼女たちの等身大の魅力が光るものだが、同時に今から行われるライブは手加減なしに突き進むという宣言をしているかのようでもある。ソロ/ユニット曲もふんだんに用意され、個々にスポットを充てているが、ここでも先の流れを引き継ぎ、流れを止めることはない。Avec Avec編曲(多分)の『ひらき直りも芸のうち』は当時としてもこれはどうなんだ?というC調軽薄リリックをらこちゃんとうさきちゃんが時代錯誤にカバーしていてバカらしくて底が抜けた面白さがある。NJS歌謡の『In The Arm of Night』の菜七ちゃんの力強いR&B系歌唱は必聴だし、『予感』のかほちゃん、『月に吠える』の小林晏夕は1人で場を支配するような強さを感じる。それから『Catch!!』~『東京ハッカーズ・ナイトグルーヴ』という90年代初頭の空気をまとわせたダンサンブルなディスコ(ジュリアナ東京とかそういうの)ソングの数々は頭を打ち付けるかのように攻撃的だ。

第ニクールも構成は同じだが、最初の流れとユニット曲が少し違うものになっている。ただし、ここで披露された『夢を』や『千夜一夜』という初期からある曲が少し色褪せて見えたのはそれだけ今の彼女たちが歩を進めているということなのだろう。『青空のハイウェイ』や『恋して女みがいて』という遊び心の多い曲が軸になっているのが印象的だった。

4回見た今、確実に言えることがある。それは今回のダンスサミットは、今この瞬間にしか見ることの出来ない、情熱的で真摯な、それはつまり、良きものを真っ当に創りだしていこうという意志に満ちたパフォーマンスだった。去年もそうだった。一昨年もそうだったのだろうし、来年もそうなのだろう。東京パフォーマンスドールのどこが良いのか、誰かに聞かれたら「良いものを作っているから」と堂々と答えたい。少なくとも、いつからか、もう何もかもを本気でやらなくなってしまって、しかも本気でやらなくてもなんとかなっていて、その状況に浸かっているだけの自分は、彼女たちのあまりに誠実なステージに少し泣いた。